2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子内電子移動を示す機能性多中心金属錯体クラスターの開発
Project/Area Number |
20036040
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 治 Kyushu University, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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Keywords | 金属錯体 / クラスター / 原子価異性 / 光応答 / 磁性 |
Research Abstract |
FeとCoがCNにより架橋されたFe-Co多核クラスターが注目されている。今回我々はFeCo五核錯体に着目しそのゲスト分子に依存した光応答性について検討した。4'-Dimethoxy-2,2'-bipyridine(L)とCo(NO_3)_2 6H_2OをMeOH溶媒中で撹拌したものに(TEA)_3Fe(CN)_6のMeOH溶液とNaB(Ph)_4を加え、溶液を静置することでFeCo五核錯体(錯体1・12H_20)を得た。錯体1・12H_20はFeとCoがシアノ架橋された5核のクラスターを形成しており、ゲストとして水分子を含んでいた。1の磁化率測定の結果に370Kで磁化の増大が見られた。TGAの測定から結晶からゲストである水分子が脱着し、その後相転移が起きていることが分かった。この時の電子状態の変化は[Co^<III-LS>(L)_2]_3[Fe^<II-LS>(CN)_6]_2[BPh_4]・12H_20→[Co^<II-HS>(L)_2]_2[Co^<III-LS>(L)_2][Fe^<III-LS>(CN)_6]2[BPh4]と表せる。また、水分子が脱着した試料1は約230K付近で相転移{Co^<II-HS>(L)_2]_2[Co^<III-LS>(L)_2][Fe^<III-LS>(CN)_6]_2[Bph_4]→[Co^<III-LS>(L)_2]_3[Fe^<II-LS>(CN)_6]_2[BPh_4]}を示した。水分子を脱着した物質は大気中で容易に水分子を吸着し元の状態に戻り水の脱吸着と原子価異性は可逆であることが分かった。水が再吸着した試料は温度上昇により約340K付近で水が脱着し再び1に変化した。さらに、水が脱着する前の試料(=1・12H_2O)と脱着した後の試料(=1)の光応答性について検討した。吸収スペクトルの測定により鉄一コバルト問電荷移動バンドが550nm付近に存在することがわかっている。そこで、5Kにおいて波長532nmの単色光を照射した。その結果、水が脱着する前の試料は為7値の上昇が見られないことがわかった。すなわち、電荷移動吸収バンドを励起し鉄コバルト問電子移動を誘起しても長寿命の準安定状態は生成せず最安定状態に緩和してしまうことが分かった。一方水が脱着した後の試料(=1)は光照射により磁化が増大し、長寿命の準安定種が生成することが分かった。すなわち、[Co^<III-LS>(L)_2]_3[Fe^<II-LS>(CN)_6]_2[BPh_4](=1)が光照射により[Co^<II-HS>(L)_2]_2[Co^<III-LS>(L)_2][Fe^<III-LS>(CN)_6]_2[BPh_4]の状態に変化した。
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Research Products
(9 results)