2008 Fiscal Year Annual Research Report
触媒的ビスメタル化における多元素系活性中間体の精密反応制御と相補的分子構造構築
Project/Area Number |
20037031
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大村 智通 Kyoto University, 工学研究科, 講師 (00378803)
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Keywords | 合成化学 / 立体制御 / 遷移金属触媒 / 付加反応 / 立体異性体 / 有機ケイ素化合物 / 選択性制御 / 有機ホウ素化合物 |
Research Abstract |
触媒的ビスメタル化の触媒サイクルにおける鍵化学種「多元素系活性中間体」の反応挙動制御に注目し、位置選択性の決定に関わる鍵因子を明らかにするとともに、この中間体の新たな機能開拓および相補的な分子構造構築のための方法論確立を目的として研究を行った。交付申請書に記載の「研究項目1. アルキンの触媒的"位置逆転シリルホウ素化"の開発」において、まずシリルボランのケイ素上の置換基効果、および触媒上の配位子の電子的.立体的効果について検討した。モデル基質として1-オクチンを用いて検討を行った結果、ケイ素上にクロロ基が置換したシリルボランを用い、立体的にかさ高く電子供与性の強いリン配位子を有するパラジウム触媒存在下反応を行うことにより、位置逆転シリルホウ素化が選択的に効率よく進行し、シリル基が末端炭素にボリル基が内部側炭素に導入された付加生成物が収率よく得られることを見出した。次にこの最適条件を用いて様々なアルキンに対する反応を検討したところ、脂肪族末端アルキンでは置換基の立体的な影響を大きく受けることなく反応が進行し高い位置選択性で付加生成物が得られたのに対し、芳香環の置換した末端アルキンでは選択性が低下することが明らかとなった。また、分子内にクロロ基やシアノ基などが存在する基質に対しても問題なく反応が進行し、本反応が高い官能基選択性を示すことが明らかとなった。これらの知見を基に、交付申請書に記載「研究項目2. 鍵中間体の同定と反応機構の解明」において、分子内に非等価な反応部位を有する1,6-ジインおよびエンインのシリルホウ素化を検討した。その結果、得られた生成物の構造からシリルボランのボリル基がシリル基に優先して有機分子へ導入されていることが示唆された。これらの知見は触媒中間体の構造と反応挙動の理解に有用であり、その特徴に基づいた新しい分子変換手法の確立に資すると考えられる。
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