2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属クラスターを活性中心に用いる低分子人工金属酵素の開発
Project/Area Number |
20037040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大嶋 孝志 Osaka University, 大学院・基礎工学研究科, 准教授 (10313123)
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Keywords | エステル交換反応 / 金属クラスター触媒 / 環境調和 / 添加効果 / アセチル化反応 / 脱アセチル化反応 / エステル-アミド交換反応 / 協奏機能触媒 |
Research Abstract |
先に我々は、多核金属酵素の機能モデルとして亜鉛四核クラスター触媒を開発し、エステル交換反応の優れた触媒であることを見出し、さらに、これまで困難とされていたアミノアルコールの水酸基選択的アシル化反応を触媒的に促進することに初めて成功している。これらの反応は、亜鉛クラスター触媒がルイス酸およびブレンステッド塩基として機能する協奏機能によって効率的に進行していることが種々の実験結果から強く示唆されている。今回、上記の研究過程で、通常アルコールより反応性が高く優先してアシル化されるアミンが共存すると、それ自体はアシル化されず、水酸基のアシル化を顕著に促進することを見出した。このアミンによる添加効果は触媒量のアミンで発現され、これまで反応性の低かった立体的に嵩高い基質を用いたエステル交換反応を高収率で促進することに成功した。このアミンの添加効果は、アミンが亜鉛イオンに配位し、水素結合を介して反応を活性化していることで発現していると考えている。さらに、アミンよりも効果的な添加剤の開発にも成功し、アミンの添加効果が低かった触媒的アセチル化反応およびその逆反応である脱アセチル化反応においても、顕著な添加効果を得ることに成功した。続いて、アミド結合の形成と切断を触媒する人工触媒の開発を目指し、亜鉛四核クラスター触媒の配位子効果の検討を行い、さらに亜鉛以外の金属イオンを有する同種多核金属クラスター、複数の金属イオンを含有する異種多核金属クラスターの合成に成功し、エステル-アミド交換反応に対してより高活性を示す触媒を開発することに成功した。それらの触媒のうちのいくつかは、アミド結合のアルコリシス反応に対しても触媒活性を示すことを見出しており、さらなる触媒構造の最適化により、温和な条件下でアミド結合切断反応を促進する新規触媒系を開発できると考えている。
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