2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20037058
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
杉村 高志 University of Hyogo, 大学院・物質理学研究科, 教授 (30187661)
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Keywords | 不斉水素化 / 固体触媒 / キラル表面 / 分子認識 / パラジウム |
Research Abstract |
フェニル桂皮酸の水素化をシンコニジン修飾Pd/C触媒、ジオキサン水中で行うと、選択性は水2.5%で最大値(81%ee)を示した後、水の増量に従って34%(水中)まで低下する。これはシンコニジンと基質の相互作用が極性の強い水によって弱められ、立体認識が低下したためと考えられる。活性炭は表面が脂溶性であり、水中で有機物を吸着する性質を利用し、少量のトルエンを水中反応に添加することによりPd回りの環境の極性を抑制する試みを行った。実際に行うとその効果は劇的であり、有機溶剤中と変わらない選択性が得られることが判った。トルエン添加量の最適値は触媒20mg、水10mlにたいして0.8mlであり、83%eeが得られた。添加量の最適値が比較的少ないことから単なる2相反応ではなく表面張力によりトルエンの液滴が安定に触媒を包括していると考えている。得られたトルエン添加触媒を様々な基質の水中での水素化に適用した結果、この効果は基質の水溶性にはあまり影響されないことが判った。注目すべきはトルエン添加水中反応がトルエン自体よりも選択性が高いことであり、反応場であるパラジウム触媒近傍はトルエンにより疎水的環境になっているのに対し、極性の強い水は原料や生成物の効率的な溶解に寄与しており、2つの異なる溶媒効果がうまく協奏的に働いた結果と考えられる。 本手法は有機溶媒の使用量を減らすグリーンケミストリーの観点と、反応前後のPd/Cによる発火を抑制する目的で行った研究であるが、結果的に単なるbiphasia反応とは異なる性質を見いだすこと力弐できた。さらにPd/Cは通常の有機溶媒中では分散が強く、生成物との分離には濾過または遠心分離が必要であるが、本研究ではPd/Cおよびシンコニジンは水中には入ってこず、反応後に水層を除くだけで生成物の分離が可能であった。このため、空気に触れることなく触媒の再利用が可能になった。
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