2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20037064
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
濱島 義隆 The Institute of Physical and Chemical Research, 袖岡有機合成化学研究室, 専任研究員 (40333900)
|
Keywords | 不斉合成 / 触媒反応 / 協奏的活性化 / ニッケル / 酢酸イオン / 共役付加反応 / 銅 / グルタミン酸受容体アゴニスト |
Research Abstract |
アニオン性配位子を有する遷移金属錯体が水やアルコールなどのプロトン性溶媒中において穏やかな酸・塩基触媒として機能することに着目し、生物活性化合物の合成を指向した環境調和型不斉触媒反応の開発研究を行った。これまでパラジウムを中心金属とする触媒を利用してきたが、本研究ではより安価で入手容易な金属として銅、ニッケル、および亜鉛に焦点を当てた。アニオン性配位子としては、水酸化物イオンや酢酸イオンなどの酸素アニオンを有する配位子を用いて、各種金属錯体を合成しその合成化学的機能を検証した。その結果、以下のような具体的な結果が得られた。 1、 水酸化物イオンを配位子とする錯体の合成:銅ヒドロキソ錯体がナフトールのカップリング反応に用いられるという知見を基に、光学活性な銅ヒドロキソ錯体またはその複核錯体を合成した。合成した銅錯体は期待通り、アルコール中において酸・塩基触媒として機能し、これまで他の金属錯体の場合適用できなかった求核剤も活性化できることを明らかにした。 2、 酢酸イオンを内因性塩基として用いる不斉触媒反応と生物活性化合物への応用:アルカリ金属の酢酸塩はよく用いられる塩基であるが、遷移金属の酢酸塩の利用は十分に検討されていない。種々検討の結果、酢酸ニッケル錯体が1,2-ケトエステルを求核剤として選択的に活性化し、ニトロレフィンとの共役付加反応を高収率および高立体選択的(ジアステレオ比>30:1,エナンチオ選択性94%ee)に進行させることを見出した。これは、1,2-ケトエステルの不斉共役付加としては最初の例である。本反応は生成物選択性が高く、1,2-ケトエステルの自己縮合やエビ体の生成は殆ど見られなかった。本反応を鍵反応としてグルタミン酸受容体の強力なアゴニストの短段階不斉合成にも成功した。
|