2008 Fiscal Year Annual Research Report
特異な構造や反応性を示すケイ素遷移金属錯体に関する理論的研究
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20038002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 久子 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60291085)
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Keywords | シリレン錯体 / ルテニウム / タングステン / イソシアナート / イソチオシアナート / 理論計算 / 分子ワイヤー / 吸収スペクトル |
Research Abstract |
1. ルテニウムシリレン錯体の新たな反応性 ルテニウム錯体は, タングステン類縁錯体とは異なり, イソシアナートやイソチオシアナートととも室温で容易に反応することを新たに見出した。イソシアナートとの反応では, C=O結合のヒドロシリル化反応を経て5員環骨格を持つ錯体を与えた。イソチオシアナートとの反応では, C=S二重結合の切断によりイソシアニド配位子を持つシリルチオラト錯体を与えた。このような反応もこれまで全く知られていないシリレン錯体の新しい反応である。 2. 水素架橋ビス(シリレン)錯体の構造,結合状態および動的挙動の解析 今回, 水素架橋ビス(シリレン)錯体のX線結晶構造解析に成功し, NMRから予想されていたように, 水素が確かに2つのシリレンケイ素を架橋した構造をしていること, 及びケイ素-ケイ素間距離が結合範囲内にあることを明らかにした。DFT(B3LYP)計算により, モデル錯体Cp(OC)_2W(siH_2-H-SiH_2)の最安定構造を求め, W-Si-H-Si骨格に関する重要な軌道を調べたところ, Wと2つのSi間には, π型軌道とσ型軌道が形成されており, Si-H-Siには3中心2電子結合型の軌道が形成されていることが分かった。従って, 計算でも, Si-Si問およびSi-H間に弱い結合性相互作用があることが示された。 3. ビフエニルユニットで連結されたシリレン二核錯体の合成と吸収スペクトルの解析 不飽和ケイ素を含む分子ワイヤーモデルの最初の例として, タイトルのシリレン二核錯体の合成に成功し, その吸収スペクトルを単核錯体と比較した。二核錯体では, 長波長の吸収帯が単核錯体のものに比べレッドシフトすることを見出し, その原因をTD-DFT(B3LYP)計算により解析した。LUMOおよびLUMO+1の軌道は, W=Siユニットとビフェニルユニット全体に広がった共役した軌道であるため, 単核に比べて長波長の吸収帯がレッドシフトしたと解釈出来る。
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Research Products
(7 results)