2009 Fiscal Year Annual Research Report
特異な構造や反応性を示すケイ素遷移金属錯体に関する理論的研究
Project/Area Number |
20038002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 久子 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60291085)
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Keywords | シリレン錯体 / ゲルミレン錯体 / タングステン / a,β-不飽和カルボニル化合物 / 高周期元素 / シリル錯体 / 理論計算 |
Research Abstract |
本年度は,主に以下の成果が得られた。 1.ジヒドリド(シリル)タングステン錯体の結合性と動的挙動に関する詳細な理論的研究 最近,6族金属では珍しいジヒドリド(シリル)タングステン錯体を単離することに成功し,その結合状態について理論計算[DFT及びCCSD(T)]を行い,この錯体が古典的なW(IV)のジヒドリドシリル錯体では無く,2つの水素とケイ素が弱く相互作用したη^3-シリカートW(II)錯体と見なされる特異な結合状態を持つことを明らかにした。この錯体は,溶液中2つのジアステレオトピックなヒドリド配位子が等価になる動的挙動を示すが,これまでにヒドリドシリル錯体の動的挙動についての理論的研究はほとんど皆無であった。今回,そのメカニズムについて計算を行い,二つの動的挙動の存在を明らかにした。 2.ヒドリド(ヒドロシリレン)錯体とa,β-不飽和カルボニル化合物との反応機構に関する理論的研究 ヒドリド(ヒドロシリレン)タングステン錯体はa,β-不飽和カルボニルと室温で容易に反応し,ほぼ定量的にanti体のみのシロキシアリル錯体を選択的に与えるということを見出している。生成物の立体選択性から,反応はシリレン錯体では報告例の無かった[2+4]環化付加機構で進行していると予想されるが,[2+2]環化付加機構と区別することは実験的には困難である。そこで,理論計算を行ったところ,[2+4]環化付加機構の方がエネルギー的に有利であることが示された。 3.ヒドリド(ヒドロゲルミレン)錯体とヘテロクムレンとの反応研究 先に合成したシリレンタングステン錯体は,様々な不飽和有機化合物に対して高い反応性を示すが,ヘテロクムレンとは,複雑な生成物を与えるのみであった。しかし,ゲルミレン類縁体はイソシアナート等とヒドロゲルミル化反応を起こし.新規な5員環骨格を持つ錯体を生成することを見出した。この反応機構を理論計算で明らかにした。
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Research Products
(4 results)