2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20038012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常田 貴夫 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 准教授 (20312994)
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Keywords | 多配置密度汎関数法 / 時間依存密度汎関数法 / 共鳴電子状態 / 電子相関の二重計算 / 解離ポテンシャル曲線 / 電子状態間相互作用 / 電子状態間交差 / 光化学反応 |
Research Abstract |
時間依存密度汎関数法(TDDFT)は、現在最も利用されている励起スペクトル計算法であるが、実際の計算では状態間相互作用が欠如しているために状態間交差が記述できないなど、さまざまな重大な問題が残されている。本研究は、問題解決の第一歩として、重要な状態間相互作用のみ取り込んだ多配置DFT、およびそれにもとついた多配置TDDFTを開発することを目的としている。この理論により、大規模分子の光化学反応の本格的な理論解析がはじめて可能となる。本年度の「研究実施計画」では、まず多配置DFTを開発し、その計算プログラムを作成することを計画していた。本年度はこの計画を遂行し、計算プログラムの開発およびさまざまな応用計算を済ませた。この多配置DFTは、オゾンやベンゼンなどの共鳴構造をもつ分子の基底状態の電子配置が主に(i, i→a, a)型二電子励起配置の混合で記述されることからの類推から、この励起配置のみを補正的に混合したDFTである。多配置DFTに対する必要条件としてGrafenstein-Cremerの必要条件があるが、新しい理論をこの条件に照らして検証した結果、size-consistencyを除く条件を満足することが分かった。また、既存の多配置DFTの最大の問題として電子相関の二重計算がある。これを検証するためにCH_2分子の電子相関について多参照理論と新しい多配置DFTとを比較した結果、これまでの多配置DFTと異なり、薪しい多配置DFTは非常にバランスの良い電子相関を与えることが分かった。このことは電子相関の二重計算がある程度回避されていることを示す。最後に、二原子分子の解離ポテンシャルエネルギー曲線を計算した。その結果、定性的には再現性が高まることが分かった。しかし、定量的には解離エネルギーを過大評価しすぎるという問題点が見つかった。現在、この問題を解決するため、理論の改善に取り組んでいる。
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