2008 Fiscal Year Annual Research Report
開殻系遷移金属活性種に関する分子理論的検討と合成化学的展開
Project/Area Number |
20038014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉戒 直彦 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (50401170)
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Keywords | 遷移金属錯体 / 分子触媒 / 計算化学 / 不活性結合活性化 |
Research Abstract |
本研究では開殻遷移金属錯体を活性種とする触媒的有機合成反応に関する分子理論的検討とその合成化学的展開研究を行っている. 具体的には鉄およびその周辺の遷移金属を触媒とする炭素-氷素結合活性化/炭素-炭素結合生成反応を開発するとともに, その反応機構に関する分子理論的検討を行っている. 今年度は, 鉄触媒と有機金属反応剤を用いる芳香族炭素-水素結合の直接変換反応の開発を行ったので以下報告する. アリールピリジンまたはイミンに対して鉄(III)アセチルアセトナートとビピリジン型配位子からなる触媒前駆体およびジクロロイソブタンの存在下, アリール亜鉛反応剤を0°Cで作用させると, 窒素原子近傍のC-H結合がアリール化された生成物が良好な収率で得られることを見出した. 特筆すべきことに, 本反応の条件はアリールハロゲン化物および擬ハロゲン化物のクロスカップリング反応に類似しているにもかかわらず, これらの官能基を損なうことなく直接アリール化反応を行えることが分かった. 例えば塩素原子を有する基質の反応は完全に選択的に進行し, 臭素原子を有する基質についても, 直接アリール化反応が主反応として進行し, 炭素-臭素結合が切断された生成物はごくわずかしか得られなかった. また, トリフラートやトシラートなどのフェノール由来の反応性官能基を有する基質についても直接アリール化が完全に選択的に進むことが分かった. 上に述べた本反応の特長は, 貴金属触媒を用い, 過酷な反応条件を必要としていた従来の直接アリール化反応に比べて特筆すべきものである. 今後, 本触媒反応の機構の分子論的検討を進めていくことにより, 鉄錯体の新たな反応性が明らかになることが期待される.
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Research Products
(15 results)