2009 Fiscal Year Annual Research Report
開殻系遷移金属活性種に関する分子理論的検討と合成化学的展開
Project/Area Number |
20038014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉戒 直彦 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (50401170)
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Keywords | 遷移金属錯体 / 分子触媒 / 計算化学 / 不活性結合活性化 |
Research Abstract |
本研究では開殻遷移金属錯体を活性種とする触媒的有機合成反応に関する分子理論的検討とその合成化学的展開研究を行っている.具体的には鉄およびその周辺の遷移金属を触媒とする炭素-炭素結合生成反応を開発するとともに,その反応機構に関する分子理論的検討を行っている.今年度は,鉄触媒と有機亜鉛およびマグネシウム反応剤を用いた芳香族炭素-水素結合の直接変換反応の開発を行った.具体的には,前年度に開発した鉄触媒とアリール亜鉛反応剤によるアリールピリジンおよびアリールイミンの直接アリール化反応を,より実用的なものとするべく検討を行った.第一の課題は,酸化剤として用いていた高価なハロゲン化物である.これをより安価な酸化剤,望ましくは理想的な酸化剤である酸素に置き換えるべく検討を行った.その結果,鉄触媒直接アリール化反応は,酸素の供給量を制御することで効率的に進行することを見出した.第二の課題は,アリール亜鉛反応剤の調製において,大量の亜鉛塩とグリニャール反応剤を必要とし,原子効率が著しく低い点である.そこで,グリニャール反応剤のみを用いた直接アリール化反応を検討した.その結果,配位子,溶媒,グリニャール反応剤の滴下方法などを制御することにより,定量的な直接アリール化を実現した.特筆すべきことに,グリニャール反応剤を用いた反応は亜鉛反応剤のそれに比べて著しく速く,0度という温和な条件下,数分で完結するというものであった.以上得られた知見をさらに展開していくことにより,鉄錯体の新たな反応性が明らかになることが期待される.
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Research Products
(1 results)