2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20038015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 敬 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10164211)
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Keywords | 水和電子クラスター / 水素結合ネットワーク / 光電子イメッジング分光 / 赤外光解離分光 / 双極子束縛状態 / クラスター負イオン |
Research Abstract |
本研究では, 余剰電子を含む分子集団(気相分子クラスター)に特有の強い振電相互作用を伴う構造変化に着目し, ナノスケール分子集合系の電子状態・幾何構造の変移, すなわち「構造転移ダイナミクス」の特徴を明らかにすることを目的として, 以下の研究テーマを実施した. 1. 赤外光解離分光とab initio計算を用いて, 電子の局在⇔非局在のモデル系である(CO_2)_n^-の2つの電子構造異性体CO_2^-(CO_2)_<n-1>, C_2O_4^-(CO_2)_<n-2>の生成に対するプロトン性分子の共溶媒(エントレーナ)効果を調べた. その結果, 共溶媒系[(CO_2)_n(ROH)_m]^-における電子の局在・非局在の様子は, 電荷共鳴相互作用による非局在化の促進と溶媒和安定化による局在化の促進の均衡によって決定され, 極めて狭いサイズ領域で両者の効果が逆転する現象を明らかにした. 2. 水和電子クラスター(H_2O)_n^-Ar_mへのエントレインメント反応と光電子イメッジング分光法を利用して, (H_2O)_n^-の分子取り込み過程に伴なう水素結合ネットワークの成長と構造変化を調べた. その結果, (H_2O)_n^-がD_2O, ROH等のプロトン性分子を取り込む際に, 電子-水素結合(e…H-O)を保持しながら水素結合ネットワークの劇的な構造転移が起こすことを明らかにした. 3. 大きな双極子モーメントを有する分子と水素結合ネットワークが, それぞれの双極子モーメントによって空間に広がった電子を束縛した新規なdual dipole-bound状態(H_2O)_n{e^-}Mを見出し,光刺激によってそれらを水和原子価負イオンM^-(H_2O)_mへ変換できることを示した. この現象は, 凝縮相の溶媒和電子による一電子還元反応の気相モデルと見做せ, その際の電子移動と溶媒和構造の変化を直接観測できる可能性が得られた.
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