2009 Fiscal Year Annual Research Report
過冷却液体の準安定相転移と物性の間の相互作用の理論研究
Project/Area Number |
20038024
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 正和 Nagoya University, 物質科学国際研究センター, 助教 (10283459)
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Keywords | ネットワーク物質 / トポロジー / 過冷却水 / 融解 / 相転移 / メタンハイドレート / ダイナミックス / 分子シミュレーション |
Research Abstract |
メタンハイドレート(MH)の均一核生成過程を、分子動力学シミュレーションにより再現し、その機構を詳細に解析した。水和したメタン4分子が正四面体の頂点に位置し、四面体の重心に水1分子が配位した会合体は、水の中でも安定に存在することができる。このため、水和したメタンは正四面体配置を好み、MHには、Frank-Kasper(FK)相と呼ばれる、非常に多様な準安定結晶相が潜在する。本計算で得られたMHは、8μ秒の長い計算の後でも既知のFK相のいずれとも完全には一致せず、アモルファス構造であると考えられる。 レーザーで結晶内部を昇温する方法などにより結晶が内部から融解する場合には、熱揺らぎにより結晶の一部が目発的に壊れ、均一核生成を経て液化すると考えられる。ここでも、氷の場合には、水分子の性質を反映して、独特な融解様態を見出すことができた。温度が融点に近付くにつれ、熱揺らぎが水素結合を切り、局所的に欠陥が対生成する。さらに温度が上がり過熱状態になると、欠陥対のそれぞれが独立にネットワーク上を拡散して分離しはじめる。一旦分離した欠陥対は、再び会合するまで、トポロジー的な矛盾を解消することができないため、欠陥対め生成は完全な結晶構造を復元する可能性を下げる。我々は、完全な結晶に戻す経路の長さを編集距離という指標で計量した結果、一見するとほぼ完全な結晶に見える構造でも、編集距離が非常に長いケーズがあること、つまり幾何学的な構造の壊れ度合いと、トポロジー的な構造の壊れ度合いが一致しないことがわかった。前者は実験的に測定可能な情報だが、融解過程をより的確に捉えるオーダパラメータは後者である。実際、氷の融解確率はトポロジー的な構造の壊れ度合いと相関していることが、多数のシミュレーションにより明らかになりつつあり、ネットワークのトポロジー的な特性を考慮した融解のモデル化が必要である。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] 氷の融解の理論研究2009
Author(s)
望月建爾、松本正和、神谷基司、斉藤真司、大峰巌
Organizer
北海道大学低温研研究会「H20を科学する」
Place of Presentation
札幌市(北海道大学低温科学研究所)
Year and Date
2009-09-10
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