2008 Fiscal Year Annual Research Report
高配位化学種と遷移金属が関与する複合電子系の反応設計と開発
Project/Area Number |
20038027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 佳亮 Kyoto University, 工学研究科, 助教 (60346088)
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Keywords | 遷移金属 / 高配位 / カルボシアノ化 |
Research Abstract |
物質・生命科学の基礎をなす有機合成化学は, 革新的な新反応の開発・発見によって大きく発展してきた. 例えば, 不斉合成やクロスカップリング, オレフィンメタセシスは, すでに化学プロセスに革命を起こしている. そのような観点からわれわれは, ニトリルの炭素-シアノ基結合をニッケル触媒によって活性化・切断し, 有機基とシアノ基をアルキンへ付加させるカルボシアノ化反応を世界に先駆けて報告した. 反応効率の向上を目指してさらに検討した結果, ニッケル触媒とルイス酸触媒を併用することによって, カルボシアノ化反応の触媒活性を飛躍的に向上できること, またルイス酸触媒を用いない反応条件では全く反応しなかったアセトニトリルなどのシアン化アルキルのアルキンへの付加も達成した. 本研究では,このように複数の金属触媒が協奏的に作用して, 不活性な炭素-炭素結合を活性化する複合電子系の詳細を理論計算によって高精度に予測・解明するとともに, その成果を実験化学的な検討にフィードバックすることによって, より高反応性, 高選択性を有する触媒系を開発して標的触媒反応の高効率化と適用範囲の拡大, 新反応の創製を実践している. 本年度は, 同触媒系によるカルボシアノ化反応の基質適用範囲の拡大を目指して検討を行った結果, 分子内配位を利用したシアン化アルキルのアルキンへの付加を達成した. 通常のシアン化アルキルを用いる反応では, 炭素-シアノ基結合の酸化的付加によって生じるアルキルニッケルからのβ-水素脱離が速く, カルボシアノ化体を得るのが困難であった, 一方, アルカンニトリルのアルキル鎖末端に窒素, 酸素, 硫黄などの配位性官能基を有するものを用いると,酸化的付加の後にこれらの官能基が分子内配位してニッケラサイクルを生じるためにβ-水素脱離が抑えられ, アルキンの挿入を経てカルボシアノ化体が収率よく得られることが分かった.
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Research Products
(2 results)