2008 Fiscal Year Annual Research Report
溶液理論と分子シミュレーションの融合による機能性分子の膜結合の分子論的解析
Project/Area Number |
20038034
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松林 伸幸 Kyoto University, 化学研究所, 准教授 (20281107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中原 勝 京都大学, 化学研究所, 教授 (20025480)
若井 千尋 京都大学, 化学研究所, 助教 (40293948)
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Keywords | 溶媒和自由エネルギー / 分布関数 / エネルギー表示 / 計算機シミュレーション / 溶質-溶媒相互作用 / 分子集合体 / 構造揺らぎ / 水 |
Research Abstract |
本研究の目的は、膜結合の自由エネルギーの定量的解析である。リン脂質二重膜への物質結合を系統的に検討する。膜への結合は、溶質がバルクの水から膜の内部・界面へ移行する過程に相当する。膜系を水と脂質分子からなる「混合溶媒」とみなすことで、膜系への溶質挿入の自由エネルギー変化を取扱った。DMPC(1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-phosphatidylcholine)の脂質二重膜への疎水性分子の結合の自由エネルギー解析を行った。膜中で大きな自由エネルギー安定化を見出したが、膜内部での強い局在化の傾向は無いことを示した。これは、SDSミセルの場合と対照的であり、DMPC頭部がメチルやメチレン基を有し、親水性が「中途半端」であるためである。さらに、溶媒和自由エネルギーをDMPCからの寄与と水からの寄与に分割した。分散引力の低下を大きく上回る斥力効果(排除体積効果)の低下によって、膜の界面領域にあるとき、水は疎水性溶質を安定化する方向に働くことを見出した。さらに、一般麻酔薬ハロタンを取り上げ、膜結合強度の圧力依存性を解析した。数百気圧までの条件、すなわち、圧力拮抗作用が見出されている生理的条件では、ハロタンのDMPCへの結合の自由エネルギー変化は、単調に圧力に依存し、かつ、小さいことを明らかにした。これは、1世紀にわたる謎である圧力拮抗作用の要因として、膜結合強度の圧力依存性はマイナーであることを示すものである。次いで、20残基程度の膜蛋白質であるグリコフォリンAを取り上げ、その脂質膜結合の自由エネルギー解析を行った。小分子で行ったと同様に、結合自由エネルギーを脂質膜との相互作用の寄与と水との相互作用の寄与に分割し、水の効果を定量的に示している。
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Research Products
(31 results)