2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属内包14族クラスターの系統的な精密合成法の開発と基本的性質の解明
Project/Area Number |
20038045
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
根岸 雄一 Tokyo University of Science, 理学部・第一部・応用化学科, 講師 (20332182)
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Keywords | 複合電子系化合物 / チオラート保護金クラスター / 二成分複合効果 / 安定性 / コアシェル型構造 / 精密合成 |
Research Abstract |
本年度は複合電子系化合物として、チオラート保護金クラスターに注目し、その二成分複合効果について研究を行った。複合元素としては金と溶融性の高いパラジウムに着目した。金とパラジウムの混合比を変化させながら生成するクラスターの化学組成を質量分析により追跡したところ、混合比によらず、金のみの安定クラスターであるAu_<25>(SR)_<18>の一つの金原子がパラジウム原子に置きかわったPd_1Au_<24>(SC_<12>H_<25>)_<18>が主生成物として生成することが分かった。溶媒抽出や高速液体クロマトグラフィーを利用することで、Pd_1Au_<24>(SC_<12>H_<25>)_<18>を高純度で単離することに成功した。単離したPd_1Au_<24>(SR)_<18>の幾何構造について調べるため、単離したクラスターに対し、複数の実験およびその理論解析を行った。その結果、Pd_1Au_<24>(SR)_<18>はAu_<25>(SR)_<18>の中心の金原子がパラジウムに原子に置きかわったコアシェル型のPd_1@Au_<24>(SR)_<18>構造を有していることが明らかになった。安定性に関する実験より、こうして中心の金原子をパラジウム原子で置き換えることにより、クラスターの熱力学的安定性がより向上することが明らかになった。Walterら、Jiangらの最近のDFT計算の結果に基づくと、こうした安定性の差は、中心原子とAu_<24>(SC_<12>H_<25>)_<18>ケージとの結合性の違いに起因される。金とパラジウムは溶融しやすく、Pd原子とAu_<24>(SC_<12>H_<25>)_<18>ケージの間ではAu原子とAu_<24>(SC_<12>H_<25>)_<18>ケージの間よりも強い結合を形成するため、Pd_1Au_<24>(SC_<12>H_<25>)_<18>はAu_<25>(SC_<12>H_<25>)_<18>より高い熱力学的安定性を示すと解釈される。同様な安定性の向上はレーザー解離に対しても観測された。レーザー解離のメカニズムについては現状では明らかになっていないが、レーザーに対する安定性の差についても、上述の相互作用エネルギーの違いが関与しているものと予想される。
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Research Products
(5 results)