2008 Fiscal Year Annual Research Report
有機イオンビーム法を用いた反応実験による有機反応論の検証
Project/Area Number |
20038049
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高口 博志 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 准教授 (40311188)
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Keywords | 化学反応ダイナミクス / 有機反応論 / イオン・分子反応 |
Research Abstract |
本研究では、イオン・分子反応を有機化学反応の微視的モデルと位置づけ、その反応メカニズムを解明することを目的としている。これを実現する実験手法として、振動・回転状態が選択された分子イオンビームを用いた反応実験装置の開発を行っている。本年度は、これまでに製作したイオン光学系全体が生成する静電ポテンシャルと、これに誘導されるイオン経路の数値シミュレーションを行い、装置全体の性能評価と改良点の精査を行った。シミュレーション計算では、電極群の実際の3次元構造をグリッド化表現し、RF電圧を印加する8重極イオンガイドを再現するために、10MHz以上の周波数で時間的に変動する電場計算を行った。反応系として、CH_3^++C_2H_6→CH_4+C_2H_5^+を想定して、イオン発生点からイオンガイドによる輸送効率と反応セル内での生成イオン再捕捉効率を、実験条件を変えながらシミュレーション計算によって評価した。シミュレーション計算結果のほとんどは、標準的な実験条件下では現在の電極設計が十分機能することを示した。イオンガイドの中心軸から3mm以内でレーザーイオン化発生したCH_3^+イオンは、ガイド内の安定軌道に収束し反応セルまで高効率で輸送された。反応セル内でC_2H_6との反応で生成したC_2H_5+イオンは、反応熱のすべてが並進エネルギーに分配された場合であっても、ほぼ完全にイオンガイドに再捕捉され、検出器に輸送されることが示された。一方で、H_+などの軽イオンを測定対象とする場合には、イオンガイドによる終息のために数10MHz以上の高いRF周波数が必要なことがわかった。また、反応セル直前の加減速電極により制御される衝突エネルギーは、0.1eV程度の低エネルギー領域では、分解能が著しく低下する結果が示された。この結果をもとに、イオンガイドの開口部分に沿った形状の電極を新たに設計するという改良の指針が得られた。
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