2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20042012
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
長浜 太郎 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, エレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (20357651)
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Keywords | 強磁性トンネルトランジスタ / ホットエレクトロン / トンネル磁気抵抗効果 / スピントロニクス / コヒーレントトンネリング |
Research Abstract |
近年、スピントロニクスはあたらしいデバイス技術として注目集めている。その中でも強磁性トンネルトランジスタ(MTT)は、半導体へのスピン注入元として期待され、その発展によっては増幅機能の実現も可能である。しかし、現状では強磁性ベース層内での散乱が大きく、コレクタ電流はあまり大きくはない。その一つの原因は、エミッタ内のトンネルバリアとして用いられているアモルファスアルミナであると考えられる。一方で、トンネル磁気抵抗素子の分野では単結晶MgOバリアが理想的なコヒーレントトンネリングを実現するバリア材料として用いられている。そこで、この単結晶MgOバリアをMTTエミッタとして採用し、注入効率の増大を試みた。 コレクタとしてGaAs(100)、ベース層としてFe(100)、エミッタとしてFe(100)/MgOを用いてMTTを作成した。その膜を三端子素子に加工して伝導特性の測定を行った。その結果、既存のA10エミッタをもつMTTに対して数倍の注入効率を実現することができた。また、磁気シグナルの大きさを表す磁気電流比(MC比)に関しても、A10-MTTに対して数倍の値を得ることができた。ベース層厚依存性からベース層内でのホットエレクトロンの減衰長を見積もると1.2Vのエミッタ電圧で8nm程度で、それまで報告されたFeベース層の値の5倍の値であった。減衰長のバイアス依存性は、電子電子散乱モデルで得られるエネルギー依存性と良い一致を示した。これらの特性は単結晶MgOバリアでのコヒーレントトンネリングに起因すると考えられる。 また、注入効率のバイアス電圧依存性にピーク構造が見られた。これはGaAs/Fe界面のスピン偏極した界面共鳴準位に起因するものであると考えられる。この共鳴準位の観測は、MgOバリアの採用により初めて可能になったものである。
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