Research Abstract |
近年, 貴金属ナノ微粒子のエネルギー緩和の際に, コヒーレント音響フォノンが観測されることがEl-SayedらやHartlandらによって報告されているが, 近赤外領域における研究は皆無に等しい。本研究では, フェムト秒近赤外分光法を用いて, プラズモンの熱緩和やコヒーレント音響フォノンの構造依存性や緩和のメカニズムを明らかにする事を目的として研究を行った。さらに, プラズモンと半導体量子ドットの相互作用を明らかにするために, その基礎となる半導体量子ドットの光物性の解析も行った。試料には, 電子ビームリソグラフィーで作製した金ナノ構造体(北大・三澤教授), テンプレート法で作製した銀ナノ構造体, および種々のアスペクト比を持った金ナノロッドを用いた。広帯域フェムト秒過渡吸収分光法およびAFM-高感度顕微分光法も用いて, 過渡吸収スペクトルと2光子発光ダイナミクスを解析した。その結果, 金ナノロッドのフェムト秒近赤外過渡吸収分光法からは, アスペクト比に依存したコヒーレント音響フォノンが観測されることを見いだし, 過渡吸収スペクトルもダイナミクスに対応し周期的に振動している事を見いだした。Gans理論を用いたスペクトル解析から, ナノロッドが±2%程度extensional modeによって伸び縮みしていること, 及びナノロッドのヤング率のサイズ・大きさ依存性をはじめて明らかにした。さらに, 近赤外域に吸収を持つ金ナノプレート(150nm角)のダイナミクスも解析し, コヒーレント音響フォノンと周期的なスペクトルシフト(〜80ps)を見いだした。プラズモン同士が9nmのギャップでカップリングした系においても, 孤立系と同程度の振動周期を持っコヒーレント音響フォノンが観測され, プラズモンカップリングが音響フォノンには殆ど影響を与えないことを実験的に明らかにした。更に, CdTe量子ドットの分光特性に関しても解析を行った。
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