2008 Fiscal Year Annual Research Report
SERSの機構解明による光-分子強結合場の定量評価法開発
Project/Area Number |
20043037
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 民武 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 健康工学研究センター, 研究員 (00351742)
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Keywords | 金・銀ナノ粒子 / 表面増強ラマン散乱(SERS) / 電磁場増強機構 / 顕微光散乱分光 |
Research Abstract |
単一分子感度の測定法として蛍光分光法があるが、測定できるのは最低電子励起状態からの発光遷移のみであり、圧倒的に多い非発光性の分子には適用できない。更に、基底電子状態との2準位間の情報しか与えないため複数種にわたる分子の多重検出は苦手としている。それに対してラマン散乱分光は分子振動による励起光のエネルギーシフトで分子を測定するため、発光・非発光に関係なく原理的に全て分子に適用できる。更にそのスペクトル形状は分子種ごとに異なるため、複数種の分子から構成された生体試料の分光検出に適している。また、SERS分光を用いると単一分子レベルの感度が可能となる場合が、あるがその発現機構が解明されておらず実用化は進んでいない。 本研究では、光-分子強結合反応場の典型的現象であるSERSを定量的な分光評価法として発展させるため、SEES増強を定量的に取り扱う実験・計算手法の確立を行った。光-分子強結合場では分子の光散乱応答は2段階の増強をプラズモン共鳴から受ける。即ち1.励起光とプラズモン共鳴モードの結合(1段階目の増強)、2.散乱光とプラズモン共鳴モードの結合(2段階目の増強)によってSEES増強度は決定される。この分子の光散乱応答を実験的に検証するため独自の顕微分光装置を開発し、取得したSEESスペクトルを3つのパラメータ(プラズモン共鳴増強光電場の強度、共鳴ラマン散乱断面積、蛍光断面積)を2段階増強機構に組み込むことで再現した。更にこの定量結果をFDTD(時間領域差分)法を使用して検証した。この検証の結果、電磁場増強機構が定量的にSERSの支配的なメカニズムであることを証明した。
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