2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20046009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠山 貴巳 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 教授 (70237056)
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Keywords | フラストレーション / 強相関電子系 / 電荷ダイナミクス |
Research Abstract |
まず、フラストレーションを持つ様々な系の電荷ダイナミクスを計算するための参考として、非等価な一次元鎖が結合した梯子系の基底状態を考えた。一方の鎖はハバード模型で記述される。クローン相互作用を正で有限に取ることでスピン密度波が長距離で強い相関をもつ状況を作った。もう一方の鎖は相互作用がない金属状態を設定した。両者の間に電子ホッピングを導入することで、両者が互いにどのような影響を及ぼすか、数値的な手法である密度行列繰り込み群法と平均場近似を用いて調べた。その結果、スピン密度波が安定な鎖では、そのスピン相関がホッピングの導入とともに一旦は上昇し、その後減少することが示された。最初の増加は量子ゆらぎの現象の結果として理解できる。金属状態の鎖には、スピン相関が誘起される。興味深いことに、相対するスピン密度波の鎖の相関が強いほど、誘起されるスピン相関は小さくなることが明らかとなった。これは、単純な直感とは相反する現象だが、平均場近似と併用することにより、次元に依存しない一般的な傾向ということが示された。電荷密度波が主要な場合、どのような電荷ダイナミクスがそれぞれの鎖で得られるか検討中である。このほか、ハバード模型やt-J模型で記述されるフラストレート系の電荷ダイナミクススに関する計算も進めている。その計算に有効な、新しい有限温度の動的密度行列繰り込み群法も本年度新たに開発した。さらに、フラストレーションがある程度存在すると思われる鉄超伝導体の母物質(反強磁性体)の電荷ダイナミクスか関する研究もスタートさせた。
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