2008 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレートした分子性化合物におけるクロスオーバー現象の熱的研究
Project/Area Number |
20046010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中澤 康浩 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (60222163)
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Keywords | 強相関電子系 / 分子性固体 / フラストレーション / 熱容量 / 磁性 |
Research Abstract |
S=1/2の二次元反強磁性三角格子の基底状態の解明は、フラストレーション科学の重要な問題である。本研究では、有機分子のつくる電荷移動塩の中で三角格子構造をもつためスピン相互作用のフラストレーションによって長距離秩序を形成しない物質について熱容量測定を中心にその基底状態、低エネルギー励起の構造を追跡する実験を進めた。まず、極低温熱容量を行うための測定系の整備を行った。高感度のロックインアンプを用いて、低温で微弱な電流量で感度の良い温度計測が可能となるような温度計測をするシステム構築に成功した。 このような装置を用いて有機ドナー分子であるBEDT-TTFからなる二次元のダイマーMott系の三角格子塩、κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3で、試料依存性まで含めた詳細な測定を行い極低温熱容量に温度に比例する項が存在すること、さらに5.7K付近で二次元ハイゼンベルグ的な磁性状態からスピン液体にグロスオーバーする温度が存在することを測定したすべての試料で見出した。熱容量の温度に対する比例係数は約15mJK^<-2>mol^<-1>となりこれは絶対零度に外挿した磁化率の値χ_0と盾しない値であり、両者が状態度を通して比例関係にあることを示唆している。さらに同様に理想的な二次元三角格子構造をとるMott絶縁体塩EtMe_3sb[Pd(dmit)_2]_2で極低温熱測定を行ったところ、温度に比例する熱容量と、ブロードな熱異常の存在を見出した。γ値は、約20mJK^<-2>mol^<-1>程度であり、先の塩と比較して30-40%程度大きくなり、また熱容量にブロードな山をもつ温度が約3.2Kとなる。この傾向は、EtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2塩の方が、ダイマー間のトランスファーの値が小さいことからJ/K_Bの値が小さくなることで理解できる。
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