2008 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレーションによって生じる非自明なスピン構造中での電荷自由度の振る舞い
Project/Area Number |
20046017
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田口 康二郎 The Institute of Physical and Chemical Research, 交差相関物質研究チーム, チームリーダー (70301132)
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Keywords | フラストレーション / Y型六方晶フェライト / コニカル磁気構造 / 磁場誘起電気分極 / 分極反転 / 磁気異方性 / スピンカレントモデル / proper screw 構造 |
Research Abstract |
スピン間の幾何学的フラストレーションによって195K付近においてproper screw型の螺旋磁気構造を示すY型六方晶フェライトBa2Mg2Fe12022単結晶試料を作製し、その磁性および磁場誘起誘電分極の振る舞いを調べた。約50K付近以下でc軸方向に強磁性成分が現れることがわかり、この物質の基底状態はlongitudinal conical 型の磁気構造であることが判明した。さらに低温でab面内で磁場を印加したときの磁化曲線に逐次転移に伴う異常が観測された。このとき、磁化とc軸に垂直方向に電気分極が生じ、3つの強誘電相と5T以上の高磁場における常誘電相が存在することが明らかになった。また、ab面内で磁場を回転させると、電気分極の向きもそれに伴って回転し、さらにc軸を含む面内で磁場を回転させると、電気分極ベクトルは向きを一定に保ったまま大きさを変化させることが明らかになった。この振る舞いはスピンカレントモデルの予言と一致する。さらに、ab面内に磁場をかけて、その大きさを変化させることによって、電気分極の反転が可能であり、±3000e、という弱磁場で分極反転が可能であることを示した。さらに、MgサイトをZnで置換することにより、磁気異方性を系統的に制御した一連の単結晶試料を作製し、その分極および磁化の振る舞いを調べた。その結果、Zn置換とともに、conical転移の温度が減少し、面内の磁気異方性が強まることが明らかになった。また、それに伴って、ab面内に磁場を印加した際に生じる電気分極の大きさが急速に減少し、x=0.3付近で消失することが明らかになった。このことは、分極の安定性がtransverse conical 構造の安定性によって決まっていることを示しており、磁気異方性が重要な役割を果たしていることを明確に示している。
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Research Products
(20 results)