2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20047008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 勝久 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (80188292)
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Keywords | 酸化物 / 薄膜 / 強磁性 / 欠陥 / 構造解析 / 非晶質 / ユウロピウム / 界面 |
Research Abstract |
スピンエレクトロニクス素子の作製において重要になる物質は磁性半導体である。これまで、遷移元素でドーピングした酸化物半導体の強磁性の機構として束縛磁気ポーラロンモデルが提案されている。また、磁性イオンを含まない酸化物において、作製条件によっては室温で強磁性的挙動が観察されることが知られており、" d^0強磁性" と名づけられている。このような酸化物の点欠陥に基づく欠陥強磁性は、新しい磁気秩序の機構として興味深いばかりでなく、新規な酸化物磁性材料を設計し、スピンエレクトロニクス素子へ展開する上でも非常に重要である。本研究では、欠陥強磁性酸化物を薄膜として合成し、高分解能電子顕微鏡観察などにより欠陥構造に関する直接的かつ定量的な情報を得て、現在提唱されている強磁性の機構を検証し、新たな酸化物磁性体薄膜材料の開発への指針を得ることを目的とする。今年度は安定相が反強磁性にもかかわらず特定の条件下で薄膜を作製すると強磁性を示すようになるEuTiO_3を中心に強磁性秩序の機構を調べた。薄膜作製にはパルスレーザー堆積法(PLD法)を用い、基板にSrTiO_3を用いて還元雰囲気下でEuTiO_3薄膜を作製すると、得られた薄膜は強磁性的挙動を示した。詳細なX線回折測定と解析の結果、薄膜は配向した単結晶であり、面内の格子定数は文献値と一致するものの面外方向には格子が伸びていることが明らかとなった。報告されている第一原理計算の結果と照らし合わせ、この体積の増加が強磁性相を安定化すると考えた。また、このEuO-TiO_3系において非晶質薄膜の作製にも成功し、これが強磁性転移を示すことも見いだした。非晶質酸化物の長距離強磁性は世界初の発見である。
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Research Products
(6 results)