2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20048006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 厚史 Kyushu University, 工学研究院, 准教授 (10243924)
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Keywords | 熱物性 / ナノセンサ / 弾道的熱伝導 / 一次元調和振動子 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブ(CNT)をデバイスへ応用するには, 電気的性質に加えて熱物性の把握が欠かせない. 特に, 正確な熱物性データを取得するには集合体から一本のCNTを取り出して計測する必要があるがそれは非常に困難な実験である. しかも, CNTの熱物性は長さや直径など多くのパラメーターに依存するためできるだけ多くの信頼できるデータの収集が望ましい. 本研究では, 理論解析とも比較できるように十分な高分解能TEM観察を行った各種のCNTを対象として, T字一体型ナノセンサという独自の手法を用いてそのCNT1本1本の計測を実施することとしている. 本年度は, GSIクレオスから提供された直径100nm程度のCVD法によるナノチューブを測定対象とした. この試料はカップスタックという特殊なタイプであり, 原子構造を学内共同利用のHRTEMを用いて詳細に調べたところ, カップが積層した形状である結晶層の周囲をアモルファスカーボンが付着していることがわかったので, 大気中500度での熱処理を行ってアモルファス層を除去し, 直径190nmで内径140nm, 長さ10ミクロン程度の結晶層のみの繊維を準備した. これを当方製作のナノセンサに取り付けて熱伝導率を計測したところ約40W/mK程度であることがわかった. これは理論的に予測できる値の200倍以上であり, 熱が弾道的に伝導している可能性を意味している. このメカニズムを解明するために非平衡分子動力学計算を行ったところ, カップスタック特有の構造が一次元調和振動子に類似の挙動を示すために, このような弾道的な熱伝導を生み出していることがわかった.
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