2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20050009
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤井 伸行 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (50452008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 一彦 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30126320)
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Keywords | マトリックス単離法 / 赤外分光 / 酸化還元反応 / 光化学 / 量子化学計算 / ヒドロキノン / 生体分子 |
Research Abstract |
生体内での分子挙動の理解と反応制御を目指して,昨年度見出したヒドロキノンの光酸化反応の詳細な実験研究を進めてきた。今年度の研究ではヒドロキノンの光酸化反応メカニズムを明らかにすることに成功した。ヒドロキノンは生体内で酸化還元反応を司る重要な分子であるが,気相など孤立系ではこの反応は進行しないために,これまで反応機構は解明されていなかった。今回マトリックス単離赤外分光と量子化学計算を用いた研究によって,ヒドロキノンに水分子が2つ水素結合を形成した錯体への紫外光照射によって,ヒドロキノンからベンゾキノンへの酸化反応が進行することを初めて実験的に検出することに成功した。このとき水分子は電子供与体としてヒドロキノンの水酸基にそれぞれ水素結合を形成することで,光照射による水素引抜酸化反応が進行するため,錯体構造と光反応性の関係をはっきりと示すことができた。また,ここでの反応はヒドロキノンと水が錯体を形成することで新たに生成するCT遷移を通して進行するため,ヒドロキノン単独の吸収波長よりも低エネルギーで反応が進行する。このような生体分子-水錯体の反応はDNA塩基やアミノ酸などでも起こり得ると考えられるために,今後,生体分子と水錯体の光反応の理解が必要になっていくと考えられる。現在は,シトシンなどのDNA塩基-水錯体およびアルギニン-水錯体の光反応の研究を引き続き行っている。また,派生研究として,イオン液体のカチオン-アニオン対の構造決定や,HBrと酸素錯体からHOOBrの生成,高圧酸素の吸収発光のダイナミクスを明らかにし,投稿論文として発表した。
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