2008 Fiscal Year Annual Research Report
機能性有機分子の低次元π電子ナノネットワーク構造の生成と評価
Project/Area Number |
20050011
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
三井 正明 Shizuoka University, 理学部, 准教授 (90333038)
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Keywords | 機能性有機分子 / 低次元 / π電子 / クラスター |
Research Abstract |
分子性材料として活発に研究が行われているπ電子系有機分子集合体の物性や機能の発現機構を段階的な分子自己集合(クラスターアプローチ)によって解明することは重要である。ところが、π電子系有機材料のほとんどは極めて高い融点を持った不揮発性固体であり、クラスターを効率よく生成する方法が確立されていない。本研究では、それらのクラスターを生成するための新たな方法を開発し、特に低次元π電子ナノネットワーク構造体を生成してその物性解明を行うことを目指している。本年度はその目的に向け、以下のことを行った。 単一有機ナノ結晶の顕微発光分光と光安定性 : 基本的なπ電子系有機材料であるテトラセンやルブレンのナノ結晶を作製し、その単一ナノ結晶の発光スペクトルを測定した。励起子の非局在化に基づく長波長側へ大きくシフトした超放射発光が観測されたが、室温・大気中におけるナノ結晶の光安定性はきわめて悪く、特に小さいサイズについて測定を行うことが困難であった。そこで単一クラスター測定を可能にする一つの方策として形状の類似した異種π電子系有機分子と混合した複合ナノ結晶を作製し、その光安定性の評価をおこなった。その結果、光安定性を著しく向上させることに成功し、サイズの小さいナノ結晶まで単一粒子の発光スペクトルの測定が容易にできるようになった。 単一有機分子の検出とその振動分光 : 単一クラスター計測のための顕微分光装置の性能の評価と向上を推進する一環として、表面増強ラマン散乱(SERS)効果が強い色素分子であるローダミン6G(R6G)の単一分子検出に取り組んだ。極微量のR6G分子を吸着させた銀ナノ粒子凝集体の一部にレーザー光を照射し、SERS信号のブリンキングやスペクトル拡散などの現象の観測に成功した。これにより本装置で単一分子(あるいは極めて少数個の分子)の検出とその振動分光が可能であることを確認された。
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