2009 Fiscal Year Annual Research Report
孤立ナノ空間に形成された水クラスターの水素結合ダイナミクス解析
Project/Area Number |
20050013
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
古谷 祐詞 Institute for Molecular Science, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (80432285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古沢 道人 東京工業大学, 資源科学研究所, 准教授 (70372399)
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Keywords | 超分子 / 赤外分光法 / 光化学 / 生体分子 / 生物物理 |
Research Abstract |
「かご状有機金属錯体」は、自己組織化により特異なナノメートルサイズの疎水的空間を内部に形成し、様々な化学反応の場を提供する「分子フラスコ」としてはたらく。本研究では、この特異なナノ空間中における水クラスターおよびアダマンタンの光化学反応メカニズムを赤外および可視分光法で比較解析し、ナノ空間に束縛された水クラスターの水素結合ダイナミクスを明らかにすることを最終的な目的としている。 これまでにアダマンタンを内包したかご状錯体に対する低温赤外分光解析により、光電子移動によるアダマンタンおよびかご状錯体の構造変化を検出した(Y.Furutani et al., J.Am.Chem.Soc., 2009)。このような構造変化を実時間で捉えるために、2009年3月に異動した分子科学研究所において、新たに時間分解赤外分光計測系を立ち上げた。光受容タンパク質であるバクテリオロドプシンについては、内部結合水のO-H, O-D伸縮振動の変化を含む4000-900cm^<-1>領域での計測を12.5マイクロ秒の時間分解能で実現した。また、アダマンタンからかご状錯体への光誘起電子移動に伴う可視吸収変化を実時間で捉えるために、東工大資源研の藤井正明教授、酒井誠准教授、井上圭一特任助教(現、名古屋工業大学助教)に協力頂いて、266nm紫外光励起、500-750nm可視光プローブのピコ秒過渡吸収計測を行った(A01班内共同研究)。さらに、A03班の須藤雄気准教授との共同研究として、光センサー蛋白質の分子機構について赤外分光計測を行い、3件の論文を発表した。以上の研究により、ナノ空間に束縛された水クラスターの水素結合ダイナミクスだけでなく、蛋白質場での特異な光誘起構造変化による情報伝達機構などについても様々な知見を得た。
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