2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規2次元赤外分光法による複雑分子高次系での構造揺らぎの実時間計測
Project/Area Number |
20050019
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 薫 Kobe University, 分子フォトサイエンス研究センター, 非常勤講師 (30397822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 圭介 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (30202203)
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Keywords | 2次元赤外分光法 / 赤外フォトンエコー法 / 複雑分子高次系 / 構造揺らぎ / 溶媒和ダイナミクス |
Research Abstract |
今年度はまず、非常に速い時間領域での分子高次系の構造揺らぎを調べるために、ポンプ-プローブ法をベースとした2次元赤外分光法の計測系を構築した。実験では、赤外パルス光をまず3つに分割し、そのうち2つをポンプ光、残りをプローブ光とした。2つのポンプ光はそれぞれを光学遅延路に通した後、ビームスプリッターで再び同軸に重ねた。同軸にしたポンプ光とプローブ光はサンプル位置で交差させ、透過したプローブ光は分光器に導入し、マルチチャンネル赤外検出器で強度変化をモニターした。また、同軸にしたポンプ光のインターフェログラムを計測することにより、光学遅延ステージのキャリブレーションを行った。装置の性能評価として、重水中のアジ化物イオンの反対称伸縮振動モードなどの2次元赤外スペクトルを測定した。これまでのフォトンエコー法をベースとした計測に比べて、2次元赤外スペクトルを簡便かつ短時間で測定することが可能になった。さらに、赤外フォトンエコー法により、極性溶媒中での構造揺らぎの計測を行い、その溶媒和ダイナミクスについて検討した。ここでは特に、振動数の揺らぎが溶質分子の電荷分布や振動モードの性質によってどのように支配されているかを検証するため、プロトン性、非プロトン性極性溶媒中でのN_3^-の反対称伸縮振動モードに対して実験を行い、SCNでの結果と比較した。振動数の揺らぎの相関関数は、100フェムト秒以下の非常に速い減衰と数ピコ秒の遅い減衰で特徴付けられた。N-メチルホルムアミドなどのプロトン性溶媒では、遅い減衰成分の割合が大きく、水素結合の解離や生成に伴う溶媒和構造の変化による寄与が重要な役割を果たしていると考えられる。これらの3原子分子イオンでは、揺らぎの時定数は比較的長距離の溶媒和構造の変化を反映しており、溶質分子の電荷分布や振動モードの性質にはそれほど依存していないことがわかった。
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