2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20050020
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
片岡 幹雄 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 教授 (30150254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上久保 裕生 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (20311128)
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Keywords | イェロープロテイン / 低障壁水素結合 / 高分解能中性子構造解析 / X線結晶構造解析 / 短距離水素結合 / 光受容蛋白質 / 蛋白質結晶化 |
Research Abstract |
水溶性光受容蛋白質であるイェロープロテイン(PYP)は、発色団に吸収された光情報が蛋白質部分に伝えられ、最終的にはN端のヘリックスを含むドメインが大きく構造を変えることで、情報を標的に伝えている。この構造変化においては、通常の水素結合に加えて、CE/π等の弱い水素結合や、短距離水素結合という強い水素結合が重要な役割を果たしている。本研究では、これら水素結合ネットワークの実体を解明するために、高分解能中性子構造解析を行った。PYPの結晶化法を工夫し、巨大結晶を安定に調整できるようした。この結晶を用いて、それぞれ1.5A、1.25A分解能で中性子回折像及びX線回折像を得た。重原子についてはX線による精密化、水素(重水素)については中性子による精密化という併用解析法を開発し、1.5A分解能で水素を含む全原子の構造を決定した。全水素942個のうち819個の位置が同定できた。その結果、発色団とE46の間の短距離水素結合は低障壁水素結合であること、発色団とY42の間の短距離水素結合は、短距離イオン性水素結合であること、カウンターイオンと思われていたR52はイオン化していないことを明らかにした。蛋白質の基底状態において低障壁水素結合の存在を明らかにしたのは、本研究が世界で初めてである。また、低障壁水素結合は、蛋白質内部で孤立した負電荷を安定化していることを明らかにし、光励起状態において低障壁水素結合から通常の水素結合へ緩和することで情報が発色団から蛋白質に伝わると言う新しい機構を提唱した。
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Research Products
(4 results)