Research Abstract |
本年度は, 以下の研究を行った. 酵素活性に変調が観測されているDHFRの2種類のアミノ酸変異体, G67V, G67Aに対して600MHz/900MHzでT2緩和分散測定を行い, 野生体との比較で骨格の構造揺らぎにどのような変調があるかを解析した. その結果, 以下の点を明らかにした. いずれの変異体についても活性ループを裏打ちするF-Gループ領域に明らかな構造揺らぎの変化が観測された. 酵素活性に変化がないG67A変異体では, 構造揺らぎの速度は野生体よりも速くなるが, 構造揺らぎの結果生じる励起構造に対する構造変化は生じない. 一方で, 酵素活性変化が観測されているG67V変異体では, F-Gループ領域の揺らぎの速度は野生体で観測されている速度の半分程度に低下し, さらに, 励起構造が野生体で観測されている構造と異なることが示された. 2つの変異体の, 主鎖の^1H/^<15>N化学シフトを比較する限りでは, 化学シフトの変化はアミノ酸変異点近傍に限定されており, 構造揺らぎの変化が観測されたF-Gループに対しては明瞭な化学シフト変化が観測されなかった. このことから, G67Vで観測されている酵素反応速度の変調は, 変異導入による活性部位の立体構造の変化ではなく, 活性部位の揺らぎそのものが変化したことによると結論付けると考える. さらに, 今回の結果からは, 揺らぎの結果生じる存在率の低い励起構造が変化することが関係していることが示唆された. 2年目では, さらにこの点を詳細に解析すると同時に, 他の変異体の解析を進める.
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