2008 Fiscal Year Annual Research Report
非線形コヒーレント分光による分子間相互作用の精密決定
Project/Area Number |
20050032
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
大島 康裕 Institute for Molecular Science, 光分子科学研究領域, 教授 (60213708)
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Keywords | 原子・分子物理 / 物理化学 / 分子分光学 / 強レーザー場 / フェムト秒化学 |
Research Abstract |
本研究は、周波数領域ならびに実時間領域での非線形コヒーレント分光の活用によって、従来の手法を凌駕する検出感度と測定精度で分子間振動のエネルギー準位構造を明らかにし、その実験的情報に基づいて真に定量性のある分子間相互作用ポテンシャルの決定を行なうことを目指すものである。本年度の成果は下記の通りである。 分子間振動について、幅広いエネルギー領域で振動準位構造を詳細に特定するために、非線形高分解能コヒーレント分光の開発に取り組んだ。昨年度に製作した、連続発振半導体レーザーをシード光とするパラメトリック増幅により単一縦モードのナノ秒パルス光を発生するシステムについて、様々な改良を加えて単一モード発振の安定性と出力を大幅に向上することに成功した。シード光を適切に位相変調したコヒーレントパルスを利用すると、非共鳴な誘導ラマン過程によっても状態分布の完全移動を実現できることを理論的に明らかにした。 また、非共鳴な高強度フェムト秒パルスとの相互作用によって分子運動のコヒーレントな励起状態を生成する方法論を用いて、ベンゼン2・3量体について分子間振動モードの量子波束の生成と観測を実現できた。具体的には、フェムト秒パルス光をベンゼンクラスターに照射し、その後にナノ秒色素レーザーを用いてREMPIスペクトルを測定したところ、振電バンドが変化することを見出した。さらに、2量体のバンドをプローブしながらフェムト秒パルス対によって励起を行なったところ、明確な量子ビートが観測された。ビートの周期は、既報の分子間振動バンドの振動数に対応しており、インパルシブラマン過程によって電子基底状態の分子間振動波束が誘起されたことを示す。同様の実験を3量体についても行い、分子間振動数に関する初めての実験データを得ることができた。
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