2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによる生体超分子複合体の構造機能相関の理論的研究
Project/Area Number |
20051013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鷹野 優 Osaka University, 蛋白質研究所, 助教 (30403017)
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Keywords | 密度汎関数法 / 金属タンパク質 / 電子状態計算 / 自然軌道解析 / 化学結合 |
Research Abstract |
今年度は、ウシチトクロムc酸化酵素のヘムaのヘムや光合成反応中心のスペシャルペアのバクテリオクロロフィルといった生体超分子複合体でよく見られる補因子の電子構造がタンパク質の構成する静電場によりどのような影響を受けるのかを量子化学計算を用いて調べた。 1. ウシチトクロムc酸化酵素のプロトン輪送機構 ウシチトクロムc酸化酵素のヘムaの酸化還元変化がプロトン移動とどのように関わっているかを明らかにするためヘムaの電子構造を量子化学計算により調べた。その結果、鉄イオンの酸化還元状態の変化により、ポルフィリン環平面でのπ共役に加えてプロピオン酸基のC-C結合のo^*軌道が共役することで、ヘムのホルミル基およびプロピオン酸基Aの電荷変化を誘起することが判明した。また、タンパク質の静電場を取り込むことで、プロピオン酸基Aの電荷変化がより大きくなることが明らかとなった。 2. 光合成反応中心の初期電荷分離過程の機構 Rb. sphaeroides由来の反応中心に対して理論計算を用いて非対称性の原因およびタンパク舞の影響を調べたところ、スペシャルペア自身の構造、特に側鎖のうちのメチルエステル基(Mes)とフィチル基(Phyt)のカルボニルの配向の差、に由来する電子非対称性があること、タンパク質環境はその非対称性を増強する効果があることが判明した。この結果の一般性を検証するため、Mes,Phyt基の配向の違いについて他のタイプ2RCのX線結晶構造14個について調査した。その結果、配向の差はその他の種でも共通であった。また構造アラインメントにより4種の反応中心とMes、Phyt基近傍のアミノ酸の構造はよく一致した. さらに18種のタイプ2反応中心の配列アラインメントから、Mes、Phyt基周囲のアミノ酸は少数の例外を除き物理化学的性質が同じアミノ酸で保存されていることが確認された。
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Research Products
(18 results)