2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによる生体超分子複合体の構造機能相関の理論的研究
Project/Area Number |
20051013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鷹野 優 Osaka University, 蛋白質研究所, 助教 (30403017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 春木 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (80134485)
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Keywords | 密度汎関数法 / 金属タンパク質 / 電子状態計算 / 自然軌道解析 / 化学結合 |
Research Abstract |
生体超分子複合体の構造-機能相関を理論的に明らかにするために分子シミュレーションを実行し、生体超分子複合体の機能発現機構の解明を目指し、分子軌道法や分子動力学法を用いて(i)チトクロムc酸化酵素のプロトン輸送機構、(ii)モノアミン酸化酵素Aの基質の取り込み機構を調べた。 シトクロムc酸化酵素は酸素の還元と共役してプロトン輸送を行う。近年、高分解能X線結晶構造解析から示唆されている新しいプロトン輸送経路(H経路)で、プロトン輸送を制御していると考えられるヘムaの酸化還元における電子構造変化を密度汎関数法により調べたところ、ヘム鉄の酸化還元がヘムの周辺部位、特にformyl基やプロピオン酸基の電荷に影響を与えていることが明らかとなった。formyl基はH経路を形成するArg38と水素結合をしていることから、その酸化還元変化がArg38のプロトン親和性を介してプロトン輸送制御に関わっていると考え、ヘムaの電子構造変化(酸化型と還元型ヘムaの構造の違い、酸化還元反応、プロピオン酸基のプロトン状態の変化)がArg38のプロトン親和性にいかなる影響を与えるのかを調べた結果、酸化状態、プロピオン酸のプロトン化状態でArg38のプロトン親和性を大きく減少させることがわかった。 また、モノアミン酸化酵素Aの基質取り込み機構を明らかにするため、脂質膜をあらわに取り扱った系とヘッド部分だけの系の双方に対して25nsの分子動力学シミュレーションを複数回行った。シミュレーションの結果を主成分解析したところ、膜分子の系では低振動数のモードに基質の取り込みに関わるドメイン運動を確認することができ、基質の入る経路および反応生成物の出る経路を同定した。一方ヘッド部分だけの系ではそのようなドメイン運動が見られず、基質の取り込みには酵素と脂質膜との相互作用が重要であることを明らかにした。
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Research Products
(25 results)