Research Abstract |
ERMタンパク質によるCD43やCD44の認識については、N-末端のFERMドメインとの複合体結晶の構造解析に成功して,変異実験などの機能解析データや超遠心解析などの物性データとともに,それぞれ論文発表した. また,Racに特異的GEFであり,癌細胞の浸潤・転移にかかわる医学的に重要なTiamlとSTEFについては,結晶構造の決定に成功した.これで,in vitroならびだin vivo機能解析が三次元構造に基づいてできるようになった.今後,変異実験などの解析データを集積して,論文としてまとめる目処が立った. 一方,植物シグナル伝達の研究では,成長等を制御する重要な植物ホルモンであるジベレリンの受容体GID1と生物活性のあるジベレリンGA3やGA4,ならびにGID1の標的タンパク質であるDELLAタンパク質の一つ,GAIとの三者複合体の結晶化に成功して,その三次元構造をX線結晶解析法で決定した.この解析により,受容体GID1がジベレリン分子を深い結合ポケットに取り込んで,ファンデルワールス相互作用・水素結合・塩橋を通して認識する詳細を解明した.また,ジベレリンの結合によって誘起された結合ポケットの蓋にあたるα-らせんの束が,標的タンパク質GAIのDELLAドメインを特異的に認識することを明らかにした.これらの発見は,英国科学雑誌Natureに発表したが,化学生物学の国際科学雑誌Nature Chemical Biologyや,米国化学会の機関誌Chemical and Engineering News (C&EN)で記事として取り上げられるとともに,C&ENの2008年度の化学領域における10大ニュースの一つに選ばれるなど,国際的に大きな反響と高い評価が与えられた.
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