2008 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポーチンによるタンパク質の核内輸送の構造生物学
Project/Area Number |
20051020
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐藤 衛 Yokohama City University, 国際総合科学研究科, 教授 (60170784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池口 満徳 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 准教授 (60261955)
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Keywords | シミュレーション / 分子動力学 / X線結晶構造解析 / 核内輸送 / X線小角散乱 |
Research Abstract |
真核細胞では核と細胞質は核膜により隔てられており、この核-細胞質間の能動輸送はおもにImportin ssファミリータンパク質により行われる。トランスポーチンもその一つで、輸送される基質の核内移行シグナルを認識して様々なタンパク質の核内輸送に関与している。われわれは核局在配列としてPYモチーフをもつ3種類の輸送基質とトランスポーチン(Transportin : TRN)との複合体のX線結晶解析を行ない、TRNが非常に柔軟な分子で、この柔軟性を利用してタンパク質を核内に輸送にすること、及び、細胞質における輸送基質の認識機構および核内での基質解離機構を明らかにしてきた。そこで、本年度はこのようなTRN分子の柔軟性を理論・実験の両面から明らかにするために、方法論の開発を行なった。複数のドメインで構成されているタンパク質ではドメイン自体の構造は硬いが、ドメイン間は比較的柔軟で構造変化しやすい傾向にある。そのようなドメイン間の相互配置の変化はタンパク質の機能と密接に関与していることが多いので、溶液中でのドメイン間のゆらぎを含めてタンパク質の機能を理解していくことが重要である。そのような溶液構造について、ゆらぎを含めて測定可能な方法がX線小角散乱法(SAXS)である。しかし、SAXSでは分子の回転平均のデータのみ得られるために低解像度にとどまるという問題点がある。一方、近年の計算機能力の増大を背景に発展した分子動力学(MD)シミュレーションでは、結晶構造をもとにして溶液構造の計算を行うことができるが、結果の妥当性を評価するには実験的裏づけが必要である。そこで、本研究ではSAXSとMDシミュレーションを結合して、タンパク質分子の柔軟性を理論・実験の両面から明らかにする新たな方法(MD-SAXS法)を開発した。
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