2009 Fiscal Year Annual Research Report
水素代謝に関与する膜タンパク質複合体の構造化学的研究
Project/Area Number |
20051022
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
庄村 康人 University of Hyogo, 大学院・生命理学研究科, 助教 (50423900)
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Keywords | 水素代謝 / ヒドロゲナーゼ / 電子運搬複合体 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
原核生物における水素代謝は,水素分子の酸化によるエネルギーの獲得と酸化還元電位の調節に関与しており,細胞の恒常性を維持する上で基本的且つ重要な機構として知られている.次世代型エネルギーとして期待される水素を生物工学的に効率よく利用するためには,これらの代謝経路を原子レベルで解明することが不可欠である.本研究では,主にヒドロゲナーゼと電子伝達体の複合体について,立体構造および詳細な反応機構の解明に取り組んできた.今年度の第一の成果は,チトクロームb共役型[NiFe]ヒドロゲナーゼの触媒部位の結晶構造の決定である.水素酸化細菌より単離された本酵素は,水素をエネルギー源として用いるのに必須であり,高い酸素耐性を持つという特徴がある.これまでに唯一結晶構造が報告されている硫酸還元菌由来の[NiFe]ヒドロゲナーゼは可溶性のチトクロームcを電子受容体とし,ヘテロ2量体を機能単位とするが,今回構造を決定した水素酸化細菌由来ヒドロゲナーゼはヘテロ2量体の2量体という会合状態をとっていた.また,チトクロームbとの3者複合体は溶液中ではヘテロ3量体の2量体として存在している事が明らかとなり,得られた結晶構造は溶液中での会合状態を反映していることが示唆された.この2量体化によって活性部位への気体分子の進入がより制限されている様子が明らかになり,本酵素の高い酸素耐性と熱安定性を議論する上での基盤となった.また,精製酵素のEPRスペクトルは活性中心のニッケルの酸化状態は酸化型,還元型ともに3価であり,COの結合ではスペクトルの形状が大きく変化しないことを示したが,結晶構造解析もこれと矛盾しない結果となった.その他にも,6Cys-[4Fe3S]クラスターなどこれまでに例の無い興味深い構造的特徴が見られた.
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Research Products
(4 results)