Research Abstract |
赤血球分化に必須な転写因子GATA-1を欠損したマウスES細胞を,試験管内で,OP9ストロマ細胞との共生培養により,赤血球方向へ分化誘導すると,本来,数回の細胞分裂を経て,赤血球へと分化してしまう赤血球系前駆細胞が,自己複製能と好中球やマクロファージへ分化することができる分化多能性を有していることを見出した.その,自己複製能・分化多能性獲得の分子機構を探るために,Cre/LoxPシステムにより,GATA-1遺伝子を任意の分化段階で欠損させることができるES細胞株(GATA-1<loxP>ES細胞)を樹立した.そのES細胞をOP9ストロマ細胞との共生培養により,分化誘導し,分化誘導開始前(ES細胞),開始から5日目(中胚葉~造血前駆細胞),7日目(造血前駆細胞),9日目(赤血球前駆細胞)で,Creを発現させ,得られた赤血球系前駆細胞の解析をおこなった結果,いずれの分化段階でGATA-1の欠損を誘導した場合においても,得られた赤血球系前駆細胞は,自己複製能を有していたが,ES細胞の段階で欠損を誘導した場合においてのみ,分化多能性を獲得した.したがって,ES細胞から中胚葉付近への分化誘導過程において,すでに赤血球系前駆細胞の性質が決定されてしまうことが明らかとなった.野生型ES細胞から分化させた中胚葉系細胞と,GATA-1欠損ES細胞から分化させた場合において,マイクロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析をおこなった結果,いくつかの遺伝子について,発現量の差を認めている.今後,それらの遺伝子の解析をおこなう予定である.
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