2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20052020
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中井 彰 Yamaguchi University, 大学院・医学系研究科, 教授 (60252516)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 充章 山口大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (80359900)
|
Keywords | 転写 / クロマチン / 熱ショック / 発生 / ストレス |
Research Abstract |
哺乳動物細胞には少なくとも3つの熱ショック転写因子HSFが存在する。そのうちHSF1が熱ショック応答を制御しているが、HSF2とHSF4の役割や、熱ショック応答制御と発生過程での遺伝子発現制御の関連については明らかではない。私たちは、これまでにレンズと嗅神経上皮などの感覚器の維持にHSF4が必要であることを明らかにした。特に、レンズは、上皮細胞と線維細胞の2つしかなく、HSF4は発生の初期からどちらの細胞にも発現する。したがって、レンズ組織はHSF4のターゲット遺伝子の同定と解析に適していると考えられる。本研究により、HSF4の発生過程と熱ショック応答の遺伝子発現制御におけるユニークな役割が明らかになった。 マウス胎生期のレンズでは3つのHSFが高発現しているが、HSF1とHSF2は出生後から極端に発現が低下し、HSF4の発現は成体に至るまで持続する。我々は、生後2日目のレンズ上皮細胞株を作成してChIP解析を行い、58のHSF4結合領域を同定した。それらは、ほとんどが遺伝子のイントロン、あるいは遺伝子から10kb以上はなれた領域に存在した。発生過程において、HSF4の結合はHSF1とHSF2の結合と競合する領域もあるし、逆にHSF4が相互作用を介してHSF1とHSF2をリクルートする領域も存在することが分かった。HSF4の結合がクロマチン修飾に及ぼす役割を調べたところ、HSF4の欠損はほとんどのHSF4結合領域のヒストンH3K9のメチル化を著しく亢進させることが分かった。このようなクロマチン修飾の変化は、HSF4の結合領域の遺伝子、あるいはその近傍の遺伝子の一部の発現変化を伴っていた。さらに、HSF4の結合領域、あるいはその近傍の遺伝子のうち、かなりの遺伝子が熱ショックによって誘導を受ける。そのうちの一部が、HSF4を欠損することにより誘導を受けなくなった。興味深いことに、HSF4欠損にともなって、その領域へのHSF1の結合が減弱していることが分かった。つまり、HSF4はクロマチン制御を介して、発生過程での遺伝子発現とともに、熱ショック応答の制御を行っていることが示唆された。
|
Research Products
(15 results)