2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20052027
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
西岡 憲一 Saga University, 医学部, 助教 (80370120)
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Keywords | 転写 / クロマチン / エピジェネティクス / 発生 |
Research Abstract |
ポリコーム群/トリソラックス群(PcG/trxG)は幹細胞の維持・分化の制御をはじめ様々な生物学的役割を持ち、生化学的にはクロマチンのリモデリング・修飾・ヒストン交換などを介して標的遺伝子の転写状態を維持している。本研究ではマウスのtrxGのひとつであるヒストンメチル化酵素ASH1Lに着目して、遺伝学的および生化学的解析を行い、その転写制御メカニズムを明らかにすることを目的とする。 平成20年度に予定していた実験のほとんどが完了できた。まず、変異ES細胞を樹立できたことは今後の解析において重要な意義を持つ。マウスの表現型やin situ hybridizationの結果から、ASH1Lによるメチル化は意外にもHOX遺伝子発現の維持には必要ないが、細胞のレチノイン酸応答の感度に異常が疑われる。このことは同じtrxGであるNLL1と比較して根本的に機能が異なることを示唆している。今後ES細胞を用いてex vivoで仮説を検証したい。また、ASH1LとNEL18の遺伝学的解析では、それぞれの表現型を抑圧するというポジティブな相互作用の結果が得られ、ASH1Lは確かにtrxGとして機能することが哺乳類独自の実験で確認できた。さらに、ASH1Lのin vitroにおけるメチル化活性においては世界的にまだコンセンサスが得られていないところがある(H3K4? or H3K36?)が、これを解決すべく、活性ドメインを含んだC末端組み換えタンパク質を発現するHEK293細胞株を樹立できた。今後はこれを精製し、きちんとした形でメチル化の標的や数を確認したい。本年度の成果によって論文の基本部分ができたので、これから上述した発展的な実験を行い、仕上げをしたい。
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