2008 Fiscal Year Annual Research Report
膜輸送の場としての膜脂質 : 環境条件による動的転換とその制御
Project/Area Number |
20053005
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
太田 啓之 Tokyo Institute of Technology, バイオ研究基盤支援総合センター, 教授 (20233140)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下嶋 美恵 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (90401562)
|
Keywords | 膜脂質 / 栄養欠乏応答 / 糖脂質 / 生体膜 |
Research Abstract |
植物細胞内外の物質輸送をつかさどる細胞膜は、動物細胞と同様リン脂質を主要な成分としている。しかし、植物をリン欠乏条件で生育させると、細胞膜やミトコンドリア膜に存在するリン脂質の大半が糖脂質に転換され、膜中にプールされていたリンが細胞内部に大量に放出される。このような栄養飢餓条件での膜脂質成分の転換は、イオウ欠乏など他の栄養飢餓条件でもそれぞれ異なる変動を示すこともわかってきた。生体膜脂質は膜輸送を行うための「場」を提供しており、このような大きな「場」の転換は膜で行われる輸送系に甚大な影響を及ぼしていると考えられる。しかし、膜脂質構成成分の変化が植物の養分吸収の効率や膜輸送にどのような影響を及ぼしているかは全く未知である。そこで本研究では、膜輸送の場としての膜脂質の重要性を明らかにするための基礎的研究としてリン欠乏応答とイオウ欠乏応答に着目し、栄養欠乏条件でも膜脂質転換の起こらない変異体の単離・解析を行う。 平成20年度は、PAH1, 2の機能に関してより詳細に明らかにするため、PAHの細胞内局在性の解析を行った。まず、細胞分画による活性測定を行い、膜画分に大きな活性が存在することを明らかにした。また、PAH1-GFPのキメラ遺伝子を発現させ、融合タンパク質が、ERや細胞膜などに特に顕著に見られることも分かった。また、われわれの明らかにしたリン欠乏応答機構が、植物に広く普遍的に見られる応答機構かどうかを明らかにするため、シロイヌナズナ以外のTypeB糖脂質合成系遺伝子の存在をゴマを例にして解析した。その結果、ゴマでもTypeB遺伝子が存在し、リン欠乏で誘導されること、ゴマでもリン欠乏時にDGDGの含量が増大することなどを明らかにした。 さらに、上記の結果に加えて、リン欠乏応答に関わる新規遺伝子の解析から、葉緑体でのイオウ糖脂質合成に関わる新規遺伝子を同定した。
|