2008 Fiscal Year Annual Research Report
酵母ストレス応答MAPK経路におけるG蛋白質シグナル制御機構
Project/Area Number |
20054006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
舘林 和夫 The University of Tokyo, 医科学研究所, 助教 (50272498)
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Keywords | 酵母 / MAPK / HOG経路 / 擬菌糸経路 / 糖鎖修飾 / シグナル伝達 / 環境ストレス |
Research Abstract |
環境変化に迅速に適応するため、生物にはストレス応答MAPK情報伝達経路が存在する。この経路は真核生物でよく保存されており、出芽酵母では高浸透圧適応に関わるHOG経路、栄養条件に応答する擬菌糸経路、接合経路が存在する。各経路はそれぞれ異なる環境ストレスに応じて活性化するが、三つの経路で共通に働くシグナル因子が存在し、Rho型G蛋白質であるCdc42もその一つである。共通因子を有するMAPK経路の中で、特定刺激に対して特定経路だけの活性化を保証する機構は、シグナル特異性の維持、経路間のクロストーク制御に必須である。本研究では高浸透圧あるいは貧栄養環境を感知し、HOG経路および擬菌糸経路に活性化シグナルを伝達する細胞膜センサーのMsb2は、O-mannosyltransferaseの一つであるPmt4によって膜外領域にO型の糖鎖修飾を強くうけ、この修飾がMsb2の活性制御、環境感知機能に重要であることを明らかにした。また、O型糖鎖修飾に欠損のあるPmt4欠失株をtunicamycin処理しN型糖鎖修飾に欠損を与えた場合、Msb2依存的に擬菌糸経路のKss1 MAPKが活性化し、HOG経路のHog1 MAPKは活性化しないことを見いだした。これに対し、擬菌糸経路でKss1を活性化するSte7 MAPKK、あるいはKss1自身を欠失させてKss1の活性化を抑制すると、糖鎖修飾欠損によりHog1 MAPKが活性化された。またPtp2 protein phosphataseの欠失によっても、糖鎖修飾欠損によるHog1活性化がおき、一方Kss1活性化はHog1依存的に抑制された。以上のことから、HOG経路と擬菌糸経路のMAPKの間には互いの活性化を制御するフィードバック・ループが存在し、環境刺激の種類に応じて、一方の経路のみが安定的に活性化される分子機構の存在が明らかになった。
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