2008 Fiscal Year Annual Research Report
低分子量G蛋白質の高次構造多型性のシグナル伝達における意義
Project/Area Number |
20054011
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
島 扶美 Kobe University, 医学研究科, 助教 (60335445)
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Keywords | 低分子量G蛋白質 / ras癌遺伝子 / シグナル伝達 / 分子認識 / 癌 |
Research Abstract |
GTP結合型Ras(Ras-GTP)の高次構造は1種類だけであると考えられてきた。しかし近年の^<31>P-NMR測定により、Ras-GTPには相互変換(遷移)可能な2種類の立体構造(state 1とstate 2)が混在していることが明らとなった。Rafをはじめとするエフェクター存在下でstate 1からstate 2への遷移が起こることから、state 2がエフェクターとの結合能力を有する真のシグナル"ON"構造であることが分かっている。一方、state 1とstate 2の間の遷移メカニズムに関しては全く分かっていない。本研究では、NMR上state 1構造をとることが予測されているがswitch 1領域の立体構造が未知のH-Ras T35S変異体のX線結晶構造解析、並びに、2つのswitch領域(switch I,switch II)周辺のアミノ酸残基H-Ras型置換を導入した6種類のM-Ras変異体の^<31>P-NMR及びX線結晶構造解析を通じて、state遷移のメカニズムの解明を試みた。M-Ras変異体の^<31>P-NMRの結果、switch領域周辺に存在するアミノ酸残基とGTPとの水素結合のネットワークが、2つのstate間の構造遷移に際して極めて重要な役割を果たすことが明らかになった。また、H-Rasにおけるstate 1の完全な立体構造として決定されたH-RasT35Sでは、前述のネットワークが完全に欠失していた。以上の結果から、switch領域周辺のアミノ酸残基はRasの2つのstate間での構造遷移ならびにstate 2構造安定化において、極めて重要な役割を果たすことが示唆された.
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