2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20055012
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
増本 博司 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (80423151)
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Keywords | 染色体構造 / ヒストン修飾 / ヒストン修飾酵素 / DNA損傷修復 / 細胞老化 / クロマチン構造 / 機能性小分子 / 早老症 |
Research Abstract |
「研究目的」出芽酵母ヒストンH3の56番目のリジン(H3 K56)はヒストンデアセチラーゼHst3, Hst4によって脱アセチル化される。Hst3, Hst4は細胞老化の制御を行なうSir2ファミリーの一つであるが、このSir2以外のヒストンデアセチラーゼも細胞老化に関与しているかどうかはよくわかっていない。本研究ではHst3, Hst4がヒストンH3 K56のアセチル化を介してSir2同様に細胞老化制御に関与しているかどうか研究を行なった。 「研究成果」hst3 hst4二重欠損株では染色体中にH3-K56のアセチル化が高度に残存するが、sir2欠損株同様に細胞の分裂回数が極端に減少した。またhst3 hst4二重欠損株は高頻度の染色体の欠損あるいは変異を誘発することで細胞寿命を短くしていることを明らかにした。さらにはhst3 hst4二重欠損株はヒトの早老症であるウェルナー症候群WRN遣伝子の出芽酵母ホモログであるsgs1欠損とは合成致死を示した。 「研究の意義および重要性」今回、Hst3, Hst4によって制御されるヒストンH3-56のアセチル化の適切なタイミングでの消失が細胞の分裂回数で規定される「分裂老化」の進行に重要であることを明らかにした。出芽酵母を用いた研究から細胞の老化の進行に伴って染色体の分断等のゲノムの不安定化が起こるが、hst3 hst4二重欠損株ではこのゲノムの不安定化が加速されることによって細胞の寿命が短くなっていることが分かる。さらにhst3 hst4 sgs1三重欠損株が致死性を示すことは、Hst3 Hst4の阻害剤であるニコチンアミド等でsgs1遺伝子欠損あるいは変異細胞を処理した場合、寿命の極端な短縮を引き起こす可能性が示唆される. 現在ヒトでもH3-K56のアセチル化が、特にガン細胞などで検出されることが知られている。本研究はヒトにおいてもニコチンアミドの大量摂取などによってH3-K56のアセチルを増大させた場合には細胞のガン化の促進の危険性、特にウェルナー症候群の患者に対して重篤な効果を引き起こす可能性を示唆している。
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Research Products
(4 results)