2009 Fiscal Year Annual Research Report
リン脂質フリッパーゼを介する「脂質場」の形成とその細胞骨格制御における役割
Project/Area Number |
20056015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅田 真郷 Kyoto University, 化学研究所, 教授 (10185069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 詩子 京都大学, 化学研究所, 助教 (90362392)
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Keywords | リン脂質 / フィリップ・フロップ / P型ATPase / 膜ドメイン / 細胞運動 / アクチン骨格 / 低分子量Gタンパク質 / Arf6 |
Research Abstract |
生体膜リン脂質は、脂質二分子膜を横切るフリップ・プロップ運動により、膜内でダイナミックに分子運動を行いながら外層・内層間で非対称な分布を維持している。これは全ての真核細胞に共通してみられるが、その生理的な役割はいまだ不明な点が多い。我々はこれまでに、哺乳動物細胞において形質膜アミノリン脂質を内向き輸送するリン脂質輸送体(アミノリン脂質トランスロケース)として、タイプ4P型ATPaseファミリータンパク質の一つであるATP8A1と、その非触媒サブユニットmROS3を同定している。 本年度、mROS3・ATP8A1リン脂質プリッパーゼ複合体が遊走細胞の先導端を形作るラッフル膜上に局在し、PE分子のフリップ・プロップの促進を介して低分子量Gタンパク質Arf6の局在と活性化を調節し、細胞運動の駆動力となるアクチン骨格再編の制御において重要な役割を果たすことを見出した。また、リン脂質結合プローブを用いて形質膜リン脂質をトラップすると、PE結合プローブで処理した場合にのみ細胞運動の阻害が観察された。さらに興味深いことに、PE結合プローブを用いて表層PEの分布を調べると、運動時には細胞の前方後方でPEの配向性が異なる膜ドメインが形成されていることが明らかとなった。 本年度の研究で得られた知見は、リン脂質分子の局所的なフリップ・プロップの活性化により特異な脂質ドメインいわゆる「脂質場」が形成されることを示している。この「脂質場」が機能タンパク質の集積する部位を特定し、細胞は膜脂質の分子運動を操ることによる「脂質場」の消長を介して分子の集積回路をコントロールし、多彩な情報処理を行っていると提唱したい。今後、「脂質場」の形成メカニズムを解明するとともに、脂質分子の配向性の変化がいかなる分子機構で機能分子群の集積と活性化を引き起しているのか、膜脂質と細胞骨格のクロストーク機構の全容を明らかにする必要がある。
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Research Products
(5 results)