2008 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸輸送体の機能・局在調節と異種シナプス間拡散性クロストークの生理的連関
Project/Area Number |
20056032
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
佐竹 伸一郎 National Institute for Physiological Sciences, 生体情報研究系, 助教 (30360340)
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Keywords | プルキンエ細胞 / バーグマングリア / 介在ニューロン / 登上線維 / グルタミン酸輸送体 / 拡散 / スライスパッチクランプ法 / 長期増強 |
Research Abstract |
下オリーブ核から小脳への登上線維からシナプス間隙外に拡散した興奮性神経伝達物質(グルタミン酸と推定)は、介在ニューロンのAMPA型グルタミン酸受容体を活性化することにより、介在ニューロン-プルキンエ細胞間のGABA作動性伝達にシナプス前抑制を引き起こすことを報告した。この小脳異種シナプス間拡散性クロストークにおいて、グルタミン酸輸送体が担う役割をスライスパッチクランプ法により検討した。 【1. ニューロン型グルタミン酸輸送体の長期増強が異種シナプス抑制におよぼす影響】 これまでに、小脳異種シナプス抑制には、プルキンエ細胞特異的グルタミン輸送体EAAT4の発現量に依存した逆行性制御機構が存在することを見出している。このニューロン型輸送体による逆行性制御の分子的基盤を追究するため、プルキンエ細胞に惹起したグルタミン酸輸送体増強が異種シナプス抑制におよぼす影響を観察した。登上線維に高頻度刺激(5Hz、30秒)を付与すると、プルキンエ細胞において(1)AMPA受容体が仲介するシナプス後電流は長期抑圧を、(2)グルタミン酸輸送体電流(synaptic transporter current)は長期増強を引き起こした。一方、輸送体増強に伴い、異種シナプス抑制は顕著に減弱した。プルキンエ細胞のグルタミン酸輸送体は、細胞外の余剰グルタミン酸を回収する役割のみならず、シナプス活動に依存して回収機能を変化させることにより、伝達物質の拡散過程に影響をおよぼすシナプス可塑性制御因子としての役割も担っていることを示唆する結果である。 【2. エタノールによる異種シナプス抑制阻害】 小脳異種シナプス抑制は、エタノールにより用量依存的(25〜100mM)に阻害されることを発見した。しかし、エタノール(50mM)は、登上線維のシナプス小胞放出確率ならびに放出多重性に有意な影響をおよぼさなかった。また、AMPA灌流投与に伴う介在ニューロンのGABA放出抑制にも無効であった。エタノールの異種シナプス抑制阻害作用は、登上線維の伝達物質放出過程や前シナプス性AMPA受容体の阻害などではなく、登上線維伝達物質がシナプス間隙から介在ニューロン終末に拡散する過程の阻害により惹起されたと考えられる。
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