2008 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞の未分化性維持機構に関わる骨髄ニッチの役割の解析
Project/Area Number |
20057001
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
清水 律子 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (40226262)
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Keywords | 造血幹細胞 / ニッチ / 転写因子 / GATA2 |
Research Abstract |
GATA2を強く発現する細胞が長期骨髄再建能を有する造血幹細胞であり、骨芽細胞と接触しながら、単独でしかも分裂もせず静かにとどまっていることから、骨髄ニッチによる造血幹細胞の静止・活性化機構の制御に、GATA-2が関与していると考えられる。ところが、従来の遺伝子ノックアウトマウス法では、胎児期における重篤な造血器障害にもとづく致死的表現型により、成体骨髄での機能解析は不可能であった。そこで本年度は、GATA2ノックダウンマウスを作製し、その解析から、GATA2が骨髄長期再建能造血幹細胞の維持に重要であることを見いだした。GATA2ノックダウンマウスは、胎生期の致死的表現型を逃れて出生し、末梢血液検査上の異常は認めなかった。ところが、加齢に伴って脾腫大および骨髄増殖性疾患様の病態を呈した。骨髄では、KSL細胞(分化抗原陰性, Sca-1陽性, c-kit陽性細胞)数には異常はなかったが、造血幹細胞分画であるCD34陰性のKSL細胞が著減していた。さらに、造血幹細胞が濃縮されていると考えられているHoechst陰性のKSL細胞はほとんど存在しなかった。このノックダウンマウスの骨髄細胞を致死的放射線照射したマウスに移植しても、骨髄細胞の長期再建は得られなかったが、致死的放射線照射したGATA2ノックダウンマウスに、野生型マウスの骨髄細胞を移植すると、コントロールと同様に骨髄長期再建が得られた。このことは、GATA2は造血幹細胞の細胞自立的な維持機構に重要な役割を担っていることを示唆している。
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