2009 Fiscal Year Annual Research Report
嗅覚神経系形成過程におけるケモカインの二元的役割とその分子・細胞メカニズム
Project/Area Number |
20057032
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮坂 信彦 The Institute of Physical and Chemical Research, シナプス分子機構研究チーム, 副チームリーダー (70332335)
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Keywords | 嗅覚 / 神経回路 / 軸索 / 蛍光タンパク質 / ゼブラフィッシュ / 嗅球 / 手綱核 / 左右非対称 |
Research Abstract |
嗅覚は、動物の生命活動に重要な役割を果たしている。匂い分子は鼻の奥の嗅上皮に存在する嗅細胞によって受け取られ、その情報は軸索を介して脳の嗅球に「匂い地図」として表現される。すなわち、多種多様な匂いを識別するためには、嗅上皮と嗅球の間に精密な神経配線を構築することが必要である。また、匂い情報が嗅球から高次中枢へと伝達され、適切に処理されることによって、匂いの質に応じた行動が出力される。我々はこれまでに、嗅上皮から嗅球に至る一次嗅覚経路において、嗅細胞の軸索投射にケモカインやSlit等の細胞外環境因子が必須であることを見いだしている。一方、機能的な嗅覚神経回路の構築メカニズムを理解するためには、嗅球から高次中枢に至る二次嗅覚経路の接続様式とその形成メカニズムについて明らかにする必要がある。本研究では、ゼブラフィッシュにおける単一嗅球ニューロンの遺伝子工学的標識法を確立し、嗅球から高次中枢への軸索投射様式を詳細に解析した。その結果、ある特定の嗅細胞と接続する嗅球ニューロンは、軸索を終脳に投射するとともに、間脳の手綱核という神経核に投射することを見いだした。興味深いことに、終脳領域への投射は左右の脳半球で対称であるが、手綱核への投射は、嗅球ニューロンの細胞体が左右どちらの嗅球に存在する場合でも、右の手綱核に特異的であった。嗅球から手綱核への直接的かつ左右非対称な神経接続の存在はこれまで全く知られておらず、我々が遺伝子工学的手法を駆使することによって初めて明らかにした。本研究で得られた知見は、二次嗅覚経路の形成における細胞外環境の役割を解明するための基盤となる。
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Research Products
(5 results)