2008 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母をモデルとした、細胞周期停止の持続による細胞死誘導機構の解明
Project/Area Number |
20058002
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 耕三 Tohoku University, 加齢医学研究所, 准教授 (00304452)
|
Keywords | 出芽酵母 / 細胞周期 / ノコダゾール / 細胞死 / アポトーシス |
Research Abstract |
本研究は、遺伝学的解析に優れた出芽酵母を用い、紡錘体チェックポイントの活性化が持続した場合の細胞死誘導機構を解明することを目的とする。細胞分裂の際に染色体が正しく分配されるためには、微小管と染色体上のキネトコアが正しく結合することが必要である。微小管とキネトコアの結合に異常がある場合には、紡錘体チェックポイントが活性化され、細胞周期の停止が起こる。これが持続すると最終的に細胞死に至るが、この細胞死が細胞内環境の破綻によるものか、制御された機構によるものかは不明な点が多い。本研究により、細胞周期制御機構と細胞死機構との関連を統合的に理解することが期待できる。さらに本研究での成果をふまえてヒト細胞で同様の検討を行うことにより、抗がん剤の作用機序の解明およびより有効ながん治療の開発にも貢献するものと考えられる。 平成20年度には、出芽酵母を微小管重合阻害剤であるノコダゾールで長時間処理した際の変化を観察した。その結果、10時間後で約40%の細胞死が見られた。細胞周期解析の結果、この細胞死は細胞が細胞分裂期にとどまった状態で起こっており、染色体不均等分配によるものではないことがわかった。ノコダゾール処理した細胞の核を観察したところ、変形、断片化が認められ、アポトーシスが起こっている可能性が示唆された。またアポトーシスの誘導に重要な活性酸素の産生も認められた。活性酸素の産生に関与するミトコンドリアの電子伝達系の変異株では、ノコダゾールによる細胞死が抑えられた。さらにノコダゾール処理した細胞では、アポトーシスの進行に重要なカスパーゼの産生も確認された。このような結果から、ノコダゾール処理によりミトコンドリアから活性酸素が産生され、これによりアポトーシスが誘導されて細胞死に至るというモデルが考えられた。現在この細胞死の経路に関与する遺伝子群を同定中である。
|