2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内プリオンタンパク質の立体構造、ダイナミクス、及び立体構造変換反応の解明
Project/Area Number |
20059016
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
桑田 一夫 Gifu University, 人獣感染防御研究センター, 教授 (00170142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 圭一 岐阜大学, 人獣感染防御研究センター, 助教 (90432187)
武藤 淳二 岐阜大学, 人獣感染防御研究センター, 助教 (80432186)
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Keywords | プリオン / 細胞内立体構造 / スクレイピー型 / ポリスレオニン / 遅い構造揺らぎ / 異常立体構造変換反応 |
Research Abstract |
プリオンの立体構造やダイナミクスは、現在まで主に溶液中または結晶中で決定がなされてきた(Kuwata et al., Biochemistry, 2001, 2003)。近年に至り、細胞外でもラフトの周辺でかつ、膜にアンカーしたプリオンに対して構造変換反応が起きることが分かってきた。さらに、標識したプリオンを細胞に注入すると、ゴルジ装置周辺への集積などが見られる。プリオンが細胞内において特異的な挙動を示すことは、プリオンが何らかの特異的な構造を有し、細胞内過程がプリオンの毒性・感染性に関連を有する可能性を示している(Kuwata et al., Proc. Natl Acad. Sci., U.S.A., 2003)。本研究では、細胞内におけるプリオンの立体構造を解析し、その動的性質や、プリオン立体構造変換反応を原子分解能かつリアルタイムで解析した。アフリカツメガエルの卵母細胞の抽出液を用い、細胞内環境に近い状態のプリオンのNMRスペクトルを観測した。その結果、プリオンのNMRスペクトルを観測できたが、プリオンタンパク質は、他の細胞内蛋白質等と相互作用するため、非常に多くの残基に化学シフトの変化が観測された。すなわち、細胞内ではユニークな立体構造を持ち得ない事が分かった。しかし、運動性に関しては、水溶液に近い状態で存在していた。また、スクレイピー感染マウスの脳乳液と^<15>Nラベルしたリコンビナントプリオンタンパク質とを混合し、生理的条件下における異常立体構造変換反応をNMRで観測した。その結果、スクレイピー型への異常構造変換初期過程として、B-ヘリックスのC末端側からB-Cループにかけて顕著な構造変化が観測された。当該部位には、ポリスレオニン配列(TTTT)が含まれており、マイクロ秒からミリ秒の遅い構造揺らぎを示す部位と一致していた。この配列は、哺乳類にしかないため、プリオン異常立体構造変換反応の起源を示すものと考えられる。
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