2009 Fiscal Year Annual Research Report
βアミロイドの産生、輸送、凝集に対する分子シャペロンの効果
Project/Area Number |
20059026
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
水島 徹 Kumamoto University, 大学院・生命科学研究部, 教授 (00264060)
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Keywords | アルツハイマー病 / モデルマウス / HSP70 / 炎症反応 / βアミロイド |
Research Abstract |
アルツハイマー病患者の急増は社会問題にもなっており、アルツハイマー病の進行を抑制する蛋白質を発見し医薬品を開発することは極めて重要である。アルツハイマー病の主な原因は、βアミロイド(前駆体蛋白質APPが分解され産生される)が過剰に産生・蓄積・凝集することにより、神経細胞の機能が低下することである。最近我々は、精製したHSP25とHSP70が試験管内でβアミロイドの凝集を抑制することを見出した。また、APPが時間・空間的にダイナミックな制御を受けている膜蛋白質であることが分かってきた。APPは小胞体内で糖鎖修飾を受けて、ゴルジ体に移行し、最終的には細胞質膜に配置される。しかし一部のAPPはエンドソームにより細胞質に戻り、リソソームまで運ばれる。βアミロイドの産生はゴルジ体、及び細胞質膜で行われると考えられてきたが、我々はエンドソーム、及びリソソームでも起こることを見出した。また受容体の活性生化・内在化に伴い細胞質膜のAPPも内在化し、それによりβアミロイドの産生が促進されることを見出した。また我々は、小胞体シャペロン、及びHSP25がAPPの細胞内輸送を抑制し、βアミロイドの産生を阻害することを見出した。一方、炎症反応もアルツハイマー病を促進すること、及びHSP70が抗炎症作用を持つことを見出した(Tanaka et al. J Biol Chem 2007 ; Suemasu et al. J Biol Chem 2009)。さらに我々は、アルツハイマー病モデルマウスにおいてHSP70を過剰発現させると、アルツハイマー病様症状(認知機能低下など)が顕著に抑制されることを見出し、HSP70がアルツハイマー病の進行を抑制していることを初めて示唆した。
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